「ま、間に合った!」

「当たり前だろ、誰の運転だと思ってんでィ」


結構なスピードと結構な運転(死ぬかと思った)でギリギリだけど無事学校に着いた。総悟くんにありがとうとお礼を言って降りるとバタバタさせて悪かったなと謝られた。珍しいこともあるもんだ。


「総悟くんが謝ることないのに。また送ってもらえて嬉しかったよ」

「…なんだそりゃ」


あれ、ラーメン屋に誘った時と同じ反応だと思いそっぽ向いた総悟くんを見ていると早く行けと怒られたのでまた夜ねと手を振る。間に合ったと言ってもギリギリだったのでまだ大丈夫だよね、と自分のクラスの窓を見上げるとそこにはものすごい数のクラスメイトたち。見られていたことに気づき、来たばかりなのにこの後の質問攻めのことを考えて帰りたくなったのだった。


「なまえ」

「あー待ってわかってるから聞かないでお願い」

「朝からバイクで送ってもらうってラブラブじゃん」


私の渾身のお願いも聞き入れてくれない友人に好奇の目を向けるクラスメイトたち、昨日よりも話が色んなところへ広がっているらしく朝からちょっとした騒ぎだ。


「何回も言うけど付き合ってないんだよね?」

「付き合ってない」

「じゃあ私たちに紹介して」

「どういう意味で…?」

「昨日は彼氏として紹介しろって言ったけどあんたがそこまで言うなら付き合ってないってことにしてあげるから、あんなイケメンそうそう居ないし紹介してって言ってんの」


意地悪そうな顔で私の肩を掴んで名案だとばかりに言う友人に「別にいいよ」と返そうと思ったのだが総悟くんを紹介するところを想像して、口をつぐんだ。


「何?急に黙っちゃって」

「えっと、総悟くん性格悪いよ」

「ちょっとした短所なんてあの爽やかフェイスを前にしたら霞むから大丈夫大丈夫」


ちょっとしたってレベルじゃないんだけどな、と色々と紹介するには難点なところをあげていく私を見て周りは何を思ったのか嬉しそうにし始めた。ニヤニヤするのはやめなさい。


「もしかして私たちに紹介したくないわけ?」

「そんなことないけど…」

「だってわざわざそんな悪いところばっかりあげて、良いところとかないの?」

「良いところ、ですか」

「そう。なんかあるでしょ」


総悟くんの良いところ、言われた通り考えてみたけど確かにたくさんある、かも。近いからと言っても絶対に部屋の前まで送ってくれるところ、意地悪だけど自分に非があると思ったときはぶっきらぼうに謝ってくるところ、面白そうなことがあると子供のようにはしゃぐところ、それから、


「ねぇなまえ、あんたさぁ」

「え?なに?」

「それ、総悟くんのこと好きなんじゃないの」


なまえはバカだから経験豊富な私がはっきり言ってあげるけどと前置きをされて、断言された言葉に開いた口が塞がらない。


「紹介してって冗談に決まってるでしょ。あんたがメール見返してニヤニヤしてんの見ちゃったし、カマかけたらやっぱり好きなの丸わかり」

「え、えええ」


これ、好きって言うの?と何度も聞いたけど全くブレずに絶対そうだとみんなに頷かれるとさすがの私も黙り込むしかなかった。


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