「おはよう総悟くん」
「あ?なんでお前が、ってその後ろのくるくるは銀八ですかィ」
「くるくるってなんだお前外では俺のことくるくるって呼んでんのか!」
「朝っぱらからうるせーや…」
「総悟くんが起きないせいで私がくるくるさんに絡まれたんだよ」
「さっき銀さんでいいって言ったよね!?なまえちゃんまでくるくるって呼ぶのやめよう?」
堂々と大きなあくびをかます総悟くんを見ながら歯並び綺麗だなぁなんてことを思っていると何やら怒ったような顔で睨まれた。
「なまえちゃんって、あんたら援交でもしてんのか」
「総悟くん私にだって選ぶ権利があるんだよ」
「確かにそうだけど酷くない?なんで俺が一方的に傷つけられてんの?」
「知り合いかって聞いてんだアホ女」
「えっなんで怒ってるの」
「…あー、なるほどねぇ」
「銀八うるせぇ」
急に私に怒り出した総悟くんと急にニヤニヤしだした先生に挟まれ訳が分からなくなっていると先生が助け船を出してくれた。
「今ここでたまたま会って沖田くんを起こすの手伝ってもらっただけだからまぁそうカリカリすんなって、な?」
「ニヤニヤすんな」
「元からこういう顔なんですぅ」
不機嫌そうな総悟くんと先生のやり取りを見ているとふと何か大事なことを忘れている気がし、何気なく時計を見て驚愕。
「遅刻する…!」
「え、マジ?俺のせいで他校生が遅刻するってそれチクられたらやべー気がするんだけど」
「チクります絶対チクりますからね」
「急に性格わりーな!」
「怒られたくないですもん!」
今日の当直は生活指導の中でもトップクラスに怖い先生なのにと半泣きになっているといつの間に着替えてきたのか準備万端の総悟くんが部屋から出てきて私にずっしり重い何かを投げてきた。
「ぎゃーぎゃー泣くくらいなら走るとかしろよな」
「え、っと、ヘルメット…?」
「銀八が迎えにきたら毎回バイクなんでィ、俺の貸してやっからそれ被っとけ」
「え、え、どういうこと?」
「おいおいおい沖田くんまさかだけどお前」
「そのまさかでさァ。他校から苦情くんの嫌なら貸してくれやすよね」
「はぁ、しゃあねぇな…頼むから事故るのはやめてくれよ…」
私が理解できないままに二人の間で話がどんどん進んでいき、総悟くんに手を引かれてマンションの前に停めてあったバイクの後ろに乗るよう促される。「青春だなチクショー」となんだか悔しそうな先生の声に見送られてバイクが走り出した。
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