「や、休みだーーー!!」


ここ一週間色々ありすぎたせいでひじょうにストレスが溜まっているのだ。やっときた土曜日にはやる心を抑えきれないあまり目が覚めた瞬間大声で叫んだ、のがいけなかったらしい。


ドンドンッ


「うわぁっ!!」


なんだなんだまた総悟くんが家に訪ねてきたのかと玄関を開けてみるも誰もいない。


ドンドンドンドンッ


「ひぃっ…こわい、怪奇現象が起こっている…」


一体なんなのだと朝っぱらから恐怖に駆られる私に追い打ちをかけるような何かを叩く激しい音。音がする方に耳を澄ませるとどうやら壁が叩かれている模様。明らかに反対側からものすごい勢いで壁を連打されている。見たところこっち側の壁は、


ピンポーン


「総悟くん、うるさい!」


あまりのうるささにお隣さんに突撃訪問をすると待ってましたとばかりに玄関が開いた。グイッと腕を引っ張られればパジャマのままお隣の部屋の中へ。


「おせぇ」

「ご、ごめんなさい」


怒っているのはこっちなのに何やらやたらと不機嫌な総悟くんのお出迎え。


「今何時だと思ってんでィ」

「朝の10時です」

「俺ァ7時から起きてんでさァ」

「休みの日だけ早起きなんだね」


言いたいのはそういうことではない、というように私が一言一言返事をするたびに眉間のシワが深くなっていく総悟くん。なんだろうこの不機嫌さは。今までに見たことない形相をしている。


「め、し、は」

「めし?」

「朝飯」

「つまり朝食を用意しろということですか」

「それ以外に聞こえんのかィお前には」


休日にいきなりブチ切れられたかと思えばまたご飯の話らしい。育ち盛りなのは分かるけど総悟くんあなた私がいなかった時(つまりここに引っ越して来る前)はどうしてたの、と問いただしたくなる、

気持ちを抑えながら一度総悟くんの部屋を出て自分の部屋へ戻る。食パン、卵、バター、を持ってもう一度インターホンを鳴らすと「うるせぇ」と怒られた。一応礼儀として鳴らしたのだがいちいちそんなことしてないで入ってこいということらしい。


「お前それ焼くつもりかィ」

「うん。モーニングブレッド。休日の朝といえばこれだと思って」


「トースターねぇぞ、うち」


総悟くんの今更な一言にすこしイラッとしてしまい「今時トースターも置いてないなんて信じられない!」と早口(超小声)で言ってから走ってまた自分の部屋へ。そしてまたパンを焼いてから総悟くんの部屋へ。この行動に意味はあるのかともどかしい気持ちでイライラしている隣人様へパンを差し出すと無言でもぐもぐと頬張り出した。


「あの総悟くん」

「あぁ?」

「今日土曜日だよ」

「だからなんでィ」

「私に休みはないの?」

「嫌なら毎日飯なんか作らなくていいですぜ」

「作らないと怒るじゃん」

「そりゃあそうだ」


土曜日の総悟くんは理不尽さが平日の三倍らしい。私が起きるのが遅かったせいで朝食が遅れたから不機嫌ってさすがのさすがに横暴にも程があると思う。


「何ボーッとしてんだ」

「ご飯食べたら眠くなっちゃって」

「こちとらこれから部活だってのに良いご身分だこって」

「そういえば総悟くんってなんの部活に入ってるの?」

「剣道」

「へえー。なんかちょっと意外だね」


俺結構強いんですぜ、と言いながら部活に行く準備を始めた総悟くん。あれ、私はもうお役御免ですか。


「いつまで見てんだ。着替えでも覗く気かィ」

「違うよ!出て行きます出て行きます!」

「あ。今日晩飯いらねーんで」

「あ、そうなんだわかったー」


なんだかごくごく自然と返してしまったけど私は総悟くんのご飯を作るのがどうやら当たり前になってきてしまっているようだ。この無性に湧き上がる悔しさはなんだろうか…。兎にも角にも総悟くんは部活で一日いないらしいので今日は好きなことをして過ごそうとウキウキしながら自分の部屋に戻った。


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