土方スペシャルを完食した翌日、見事にお腹を壊した。 おかげさまでいつもより家を出る時間が大幅に遅れ、確実に遅刻だ。遅刻だからと言えども急がないとと思い部屋を出ると、同じタイミングで隣からもガチャン、とドアの閉まる音。
「おはようごぜぇやす」
「お、おはよう…」
「なんでィその面」
「土方スペシャル…恐るべし…」
隣人の総悟くんが寝ぼけ眼で私の真っ青な顔を見て笑っているが寝癖だらけのあなたも相当ひどい感じになってますよと返してやりたい。今は腹痛でそんなこと言う余裕もないけど。
「今日は遅いんですねィ。この時間なら100%遅刻だろ」
「昨日の犬の餌でお腹を壊したの」
「下痢か」
「やめて汚い」
あまりの腹痛に思わず犬の餌と言ってしまったが総悟くんはあまり気にしていない様子。ていうか言い出しっぺは総悟くんだものね。
「ううう痛い痛すぎる…」
「そんなんで歩けんのかィ」
「頑張る、気合い、なんとかなる」
「何とかなんねー顔してっけど」
ぐぬぬ、と唸りながらなんとか一歩一歩進んでいるのだが総悟くんと話していて気づく。
「総悟くんの学校こっちじゃなくない…?」
「こっちからも行ける」
「いや、行けるっていうかUターンしないと絶対辿り着かないよ方向的に」
「今朝の気分的に寄り道してくことを今決めやした」
「遅刻するよ?」
「どのみち遅刻でさァ」
そんなに面白いものがこっちにあるのかと思いとりあえずは納得して二人並んで通学する。しかし不思議なもので一人の時よりも話しながら歩いた方がだんだん気分が楽になってきた。
「なんかいいねこういうの、憧れてた青春って感じする」
「下痢女が何言ってんでィ」
「やめて汚い」
やり取りも普通に出来るようになってきた頃、とうとう私の学校の前まで着いてしまった。腹痛を抱えながらも体感的にはいつもより早く辿り着いた気がする。
「あれ、総悟くんどこまで寄り道するの?」
「この辺でさァ。ま、気が済むまで適当に散歩したら行きやす」
「サボる気だ」
「まさか。昼までには行かねーと焼きそばパンが売り切れちまう」
「お散歩もほどほどにね」
「言われなくても分かってらァ。早く行きなせェ下痢女」
「やめて汚い!」
無事腹痛で倒れることなく登校できたお礼として今日の夕飯はオムライスにしてあげた。しかも女子高生らしく可愛くお手紙で「総悟くん、朝はわざわざ送ってくれてありがとう」というメッセージまで用意したのに気持ち悪ィと言われすぐに捨てられた。
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