「うぇっぷ…」


土方スペシャルを見事完食しひどい胃もたれと吐き気に襲われながら土方さんの謝罪を聞き、一応仲直りはできたものと思われた。満足したのか気を利かせたのか、土方さんはその後自分も土方スペシャルを食べてからまたなと言い残して帰って行ったのだが、総悟くんと二人沈黙の時間がしばらく続いている。


「総悟くん、お水を…」

「…はぁ、なんであんな犬の餌全部食ったんでィ」


吐き気に耐えられず思い切って総悟くんに水を要求すると呆れたように返された。それにしても仮にも土方さんの好物を犬の餌って酷くない?


「仲直りの近道かと思いまして」

「アホだな」

「またアホって…」

「アホはアホでさァ。あんなもん人間の食い物じゃねぇ」

「ご飯もマヨネーズも一応人間の食べ物だよ」

「俺ァマヨネーズの赤いキャップ見ただけで吐き気がしやす」

「そんなに!?」


いつの間にか普段通りの会話が出来てて、ああなんだ総悟くん怒ってないじゃん、と安心した。なんで私がこんなにご機嫌を伺っているのかはよく分からないけど。


「それにしても総悟くんの部屋、五日振りだけど本当に綺麗に片付いてるね」

「当たり前だろィ。あんたと違って手際が良いんでね」

「なにそれ、私も頑張ったのに」

「初対面にしちゃあ一日よく耐えた方だと思うぜィ」

「え、総悟くんにってこと?荷ほどきではなく?」

「褒めてやってんだから素直に喜びなせェ」

「全然褒められてる気がしない」


今の総悟くんの部屋はつい数日前の閑散としたダンボールだけの時とは全然違って普通の男子高校生の部屋、って感じだ。そしてふと実感する。


「男の子の部屋に入ったの初めてだ」

「また俺が最初ですかィ」

「不本意ながらそうでございます」

「ま、一番ってのは悪い気はしねェや」

「なんか生活感が出てきたらグッと男の子感増したから思っちゃって」

「あーあモテる男は辛ェなぁ」

「そんな性格でモテるの?」

「男を見る目、養ったらどうでィ」


総悟くんが本当にモテるかどうかは置いておくとして。胃もたれもしているし今日はそろそろ帰ろうと立ち上がると総悟くんも一緒について部屋を出てきた。


「すぐ横だからいいのに」

「いちいちそんなこと言ってるとモテねぇぞ」


詰まるところ甘えるところは甘えとけということなのだろうか。勉強になります。

また明日も晩ご飯を作ってあげる約束をし、じゃあね、とドアを閉めようとしたら総悟くんに小さい声で、


「…昨日は悪かった」


と謝られた。返事をすることなくドアは閉まってしまったけど、なんだかんだ総悟くんは良い人なのかもしれないと昨日落ちた分くらいの好感度は上がった気がした。


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