なまえとデートをした休日からしばらく、俺は悩みに悩んでいた。あのありがとうの意味と彼女の考えていることが全くつかめないからだ。


08


「最近ぼーっとしてるね」

「あ、俺?」

「以外に見える?」

「俺だよね」

「私ね、ザキくんが考えてること分かっちゃった」


俺は君の考えてることが全く分からないよ。

そう返したかったけどなまえは得意げな顔で俺の目をまっすぐ見た。


「好きな子のこと考えてるでしょう」

「考えて、る…」

「大当たりー。ザキくん分かりやすいね」

「この間のことなんだけど、なんでなまえはありがとうって言ったの?」


この流れならいけるか?ここ数日悩み続けた疑問を今ぶつける時だと決心してなまえに聞いてみるとまん丸な目をこれでもかとおっきくされる。


「えぇ?だって私のこと可愛いって」

「ぶっ!」

「すごく好きって」

「い、言ったけど!それは好きな子の話をしてて、」

「だって私でしょう」


あああそういうことか俺の好きな子バレてたんだ!バレてたっていうかこの当たり前みたいに言うなまえの顔を見たところずっと分かっててデートに誘ったんだ!うわあなんてずるいやつ!自分は土方さんを好きなくせにそうやって俺を弄ぶんだ!

一通り考えに納得がいったところでそんなことよりも好きなのがバレていたことに恥ずかしくなって、授業始まるよと誤魔化して今日は俺が机に突っ伏した。


「ザーキーくーん」

「なまえ、うるせぇや」

「沖田くん、ごめん。でもザキくんと今大事な話を」

「イチャつくなら他でやってくだせェ。山崎の恋愛とか興味ねーからマジで」

「沖田くんのケチ」

「あぁ?」


額に青筋の浮いた(であろう)沖田さんに怖じ気づいてなまえも机に突っ伏す気配がわかった。これでこれ以上追求はされないだろう、今だけ感謝します沖田さんありがとう。


「おい山崎ィ」

「ちょっと今マジでやめてください山崎をそっとしてあげてください」

「お前アホだな」

「なんですかいきなり」

「そんなぼーっとしてっと持ってかれんぞ、コレ」


沖田さんがコレ、と指差したのは彼の真後ろで恐怖に冷や汗を流しながら寝たふりをしているなまえ。え、持ってかれるってなに。


「まーいいや。おいなまえ、起きろ」

「ぐー、ぐー」

「バカみてぇな寝たふりすんな」

「なに、沖田くん」

「お前惚れてるやつとかいんのか」

「いるけど」

「なぁにィー!やめてくれよなまえー!授業中にも関わらず俺のことが大好きだなんてそんなァー!」

「え、ちょ、言ってな、」

「ちょっとそこ後ろの方先生放っといて青春繰り広げるのやめてくれるー!?ていうか沖田お前席そこだったっけ!?」

「なまえどういうことアル!そんなサド野郎が好きだったなんて聞いてないヨ!」

「いやー参ったなーこりゃ俺ら付き合うしかねーのかなァー!」


ざわざわと一気にうるさくなる教室に呆然とするなまえ、と俺。ていうか何してんだこのサディスト!


彼女は狙われている
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