気が気ではない俺の耳に隣の席からうるさいくらい鳴り続けるピコン、という音に全く授業内容が入ってこなかった。


06


「…ちょっと、なまえ」

「ザキくん…」


俺がこれは流石に注意されるぞ、とつい心配になって声をかけるとなまえも困った顔でこちらを見てきた。

いや、それお前のケータイから鳴ってる音でしょ。


「助けてザキくん。眠いのに、地獄だこんなの」

「通知切りなよ」

「やり方分かんない」

「お前本当に現代人!?」


失礼な、と眉をしかめたなまえからこっそりとケータイを受け取り鳴っていたのはこれか、とLINEを開く。通知には沖田総悟沖田総悟沖田総悟沖田総悟沖田沖田沖田沖田…


「なにこの鬼のような通知」

「沖田くんが昨晩からずっと送ってくるの、困ってる」

「ああ…そういう…」


沖田さんがわざわざ俺に聞かせるように会話していたのもなまえがクマを作って来たのも理由がわかったところで一安心。通知の切り方、あとで教えてやらないと。


「むしろブロックしてやろうか…っひぃ!」


沖田さんが勝手に席替えしたことを忘れており呟いた言葉にゆっくり振り返った悪魔ににっこり微笑まれる。口パクで

け し た ら こ ろ す 。

どうやらブロックしたら殺されるようだ。


「ザキくん、もう沖田くんの連絡先消すとかできないの?…いてっ!」

「俺と連絡とんのが嫌ってか?あ?」

「…ザキくんやっぱり消さなくていいや」

「う、うん」


なまえも沖田さんには敵わないらしい。というか沖田さんの圧力のかけ方が異常なんだ。とりあえず通知だけ切る設定にしておいてなまえにケータイを返すと安心したようだった。


「ようやく寝れる」

「はいはい、おやすみ」

「おやすみザキくん」


そう言ってまたへにゃりと笑う姿にドキッとする。ああずるいやつ。


彼女は機械音痴
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