「ザキくんおっはー、イエイイエイ」

「え、何そのテンション」


04


朝登校するといつもは遅刻ギリギリ(厳密に言うと遅刻)で来るはずのなまえが既に着席していた。


「いいことありました」

「だろうね、見りゃ分かるよ」

「ザキくんに一番に見せてやろうと思って」

「あ、ありがとう」


ニコニコといつになく嬉しそうな彼女に戸惑いながらも一体なにがあったんだとそわそわしてしまう。もしかして、彼氏ができたとかだったら俺は死ぬ。そんなことはあり得ないと思うけど。


「じゃーん」

「…スマホ」

「機種変しちゃいましたー」

「もしかしてそんだけ?」

「そんだけ、だけど」


なんだよ!もっと大事なことかと思ったのにガラケーからスマホに機種変しただけかよ!それを何故俺に一番に見せたかったのか分からなくて返答に困っていると眠そうな顔をした沖田さんがご登校なされた。そして自分の席(元長谷川くんの席)に座る。


「沖田くんおはよ」

「おー…ありゃ、スマホに変えたんか」

「よくぞ気づいてくれた!」

「ふーん、まずあれ入れろよあれ、LINE」

「ふっふ、もう入れてあるよ」

「ID教えろ、ついでに番号」

「あー…」


手慣れたようになまえから連絡先を聞き出す沖田さんを見てああそれだ!と気づいた。もしかして俺と最初に連絡先を交換しにわざわざ待ってたのでは?と。証拠に沖田さんに聞かれても口ごもってチラチラとこちらを見ているなまえ。


「ザキくん」

「あ?あぁ山崎いたのか」

「いや、さっき目合いましたよね」

「気持ちわりぃこと言うな」

「あの沖田くん。ザキくんと、交換してからでもいい?」


あぁやっぱりそうだ。なまえはちょいちょいこういう可愛いことをしてくるんだ。

心臓がきゅう、と締め付けられるようなぞわぞわした感覚に襲われながらも早く交換してあげようとスマホを取り出した。


「無理」

「え?」

「ほい、と。一番乗りいただき」

「ああああ!」


のだけど、沖田さんにするりと新しいスマホを奪われあっという間になまえと連絡先を交換されてしまった。されてしまったって中々大げさな言い方だけど。なまえは悲しそうに沖田さんの手に握られている自分のスマホを見つめている。


「あー、なまえ」

「ザキくんのばか」

「え!なんで俺!?」


わざわざ早起きして待っててくれたのになんか可哀想だな、となまえに気にするなと言ってやりたかったのに返ってきた返事は俺への悪口だった。

え、何かした?俺。それ言うなら沖田さんにでしょ?


「ザキくんのばか!」

「やーい山崎が怒らしたー」

「いや元凶アンタだろ!」


なまえのご機嫌はそのあとも直らないようで授業中もお昼の前も後も、一度も俺の方を見ようともしなかった。その様子にだいぶご満悦そうな沖田さんにニヤニヤされながら一日を過ごしたけど、なまえに避けられているのがショックすぎてあまり覚えていない。


彼女はご機嫌ななめ
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