付き合い始めたからと言って何が変わるわけでもないらしい。あれから数日経つけど学校生活に変化はなし、毎度のことながら授業中爆睡するなまえのためにノートをとって、昼にはきちんと起こしてあげている。


「ザキくんお昼食べよう」


嘘だ、変わったことが少しだけあった。あれから毎日一緒にお昼を食べて、放課後は手を繋いで帰っている。


20


「毎日よく飽きもせずイチャつけんなァ」

「沖田くんも一緒に食べる?」

「ふざけんな、冗談は顔だけにしろィ」

「失礼にも程があるよ全く」


そうは言うけどなまえ、今ここに沖田さんを招いたら端から見れば今彼元彼彼女のスーパートライアングルに見えるからやめといたほうがいいと思う。なんなら土方さんも誘ってしまえばさらにややこしいグループ構成になるだろうなとぼんやり考えていると顔面に何か熱いものが当たった。


「アヅゥッ!」

「あああ大丈夫!?」

「だ、大丈夫だけど」

「私の餃子…!」

「ねぇ俺の心配は!?」

「地味餃子の出来上がりでさァ」

「貴様ァ…これは王将餃子の分んんん!」

「いてっ!何すんでィ殺すぞクソアマ!」


どうやらなまえと沖田さんが喧嘩を始めたらしい。食べ物を粗末にするのはやめなさいと止めに入るけどすっかりヒートアップしていてもはや殴り合いになりかけている。まぁそんな大げさなやり合いになれば三秒と持たないでなまえが土下座して謝るのがいつもの流れだ。素知らぬふりで弁当を食べていれば半べそをかきながら戻ってくるだろう。


「ザキくん…ぐす、餃子一個なくなった」

「俺の顔に当たったやつね」

「なんでキャッチしてくれなかったの」

「無茶言うな!」


ぶーぶーと拗ねるなまえにコンビニ弁当に入っていた唐揚げをひとつ差し出すと迷いもなくぱくりと食べた。


「仲良いのはいいけど、なまえは他のメスゴリ…女子たちと違って力もないんだからほどほどにしなね?」

「この唐揚げべちょべちょ」

「育ち盛りの男子から貴重なタンパク源奪っといてお前は。ていうか話聞いてる?」

「だって、全然餃子の代わりにならない」

「ワガママだなもう。じゃあ何なら元気出るのさ」


ぷっくり膨れた頬を突けばぷしゅーと空気が抜けて萎んでいく。こんな拗ねた顔をしていても心底可愛いと思ってしまうのだから、恋は盲目とはよく言ったものだ。


「クレープ。帰り一緒に行ってくれたら超ハッピーになる」

「いいよ、前に言ってたところでしょ?」

「あとたこ焼き」

「わかったわかった。帰り商店街寄ろうか」

「へへ、嬉しくて今からお腹空いてきちゃった」

「今食べてるのに!?」

「ザキくんとまた放課後デートだね」


へらりと笑うなまえにこっちまで浮かれ気分が伝染して、二人して緩んだ顔で弁当を食べた。

こんなやり取りを毎回見ている周りからは「平凡ななまえと地味な山崎は本当にお似合いだ」と評判である。いやでもこれ、褒められてるのか?


彼女は平凡で俺は地味
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