俺が高校三年の今に至るまで、ずいぶんと長いこと好意を寄せ続けている子、なまえは今日も教室の一番奥、日当たりの良い席で周りには目もくれず大きなあくびをしていた。 ゆめみひるがお 01 「なまえ、今寝たら絶対バレるよ」 「…んー、またザキくんにバレちゃった」 「いや俺じゃなくてそろそろ先生にバレるから起きて起きて」 「大丈夫、誰も私たちみたいな地味な生徒は目に入らないよ」 「さりげなくたち、って俺も含むのやめてくれない?」 ふああ、ともう一度こちらに大きな口を開けてくるのはいつものこと。そう、否定はしたが言われた通り俺たちはこのクラスでは地味な部類に入るだろう生徒だ。何てったってZ組は変人と基地外の集まりである、そんな中で比べられては地味と言われても仕方ないと思う。 と、話は逸れたが俺に負けず劣らず地味というカテゴリーにぴったりななまえは、他の生徒によってめちゃくちゃになる授業の影でいつもこっそり居眠りや落書きなどなど、かなり自由に時間を過ごしている。そして、隣の席の俺はいつもいつもそれを眺めている。 「ザキくん今日のお弁当はなーに」 「俺が君の弁当の中身知ってるわけないでしょ」 「昨日は聞いたら答えてくれたのに」 「そりゃ机の横に王将の袋ぶら下げて餃子の匂い教室中に撒き散らしてたら誰だって気づくよ」 「そっかあ」 「そっかあじゃなくて聞いといて寝る体勢に入るのやめてもらっていい?」 でも眠たいよ、と目を瞬かせる彼女にため息を一つ。 「仕方ないな…バレそうになったら起こしてあげるよ」 なんて呆れたふうに言っておきながらも「ありがとうザキくん」というへらりとした笑顔にいつもこうして甘やかしてしまうのだ。そしてそんな心境を知ってか知らずかなまえは困ったことがあるといつもこのふにゃふにゃの笑顔で俺に助けを求める(助けったってたかが知れているけど)。本当、良いように使われてるよね俺。 彼女はずる賢いやつ → |