俺は彼女の考えていることが全く理解できない。もう既に二年と少し仲良くしているはずなのに全く、本当に全く理解できないのだ。


「なまえって変わってるよね」

「Z組だもの、普通ではないかもね」

「それを言っちゃおしまいだけどさ」


11


ていうか、ザキくんも大概変だよと言われてそんなわけあるかと憤慨しているとなまえに頭のおかしい奴でも見るような顔をされた。


「変だよ、本当に」

「いや、そんな真面目な顔されても」

「毎日昼休みにバドミントンのラケットで素振りしたり飽きたら一人でガバディしてるような人が普通だと思えるだろうか、否思えるわけがない」

「倒置法!」

「へへ、テスト出るよ」


いたって変わらないいつも通りの休み時間、今日は寝坊だかなんだかでなまえの前の席に沖田さんが座っていない為非常に平和だ。


「そういえば沖田くんに帰り送ってもらうのやめたよ」

「え?」

「この間ザキくんがストーキングしてた日から」

「謝るからストーキングって言わないで近藤さんみたいだから」

「ザキくんもっと早くに気にしてくれないとさ、私のお財布すっからかんだよもう。毎日帰りに奢らされて大変だったんだから」

「…どういうこと?もっと早く気にしてくれないとって」

「私が沖田くんと帰ってるって教えてからの行動が遅すぎるよ」

「はい…?」


え、何だ、なまえはもっと早くに俺にストーキングされたかったってこと?いやなんか語弊があるなこの言い方は。

最近気づいたのだがもしかして彼女は俺にやきもちを焼かせたいのか?ちょっと自惚れが過ぎる気もするけど毎度毎度のこの謎の言動に振り回されながらも頭を捻って捻って考え出した結論だ。まあ到底本人にはそんなこと聞けないんだけど。


「ザキくんは私のこと好きなんだよね?」

「それ普通面と向かって言う!?顔熱っ!恥ずかしいわ!」

「好きならもっとこう、積極的にいかないとさ、ダメだよ全くもう」

「え、なんで俺怒られてるの?」

「意気地なし」

「ご、ごめんなさい…」


自分は土方さんにちっともアピールしていないくせに何故俺にはもっと積極的に、なんて怒るんだろう。積極的にいったところでお前は俺を振るんだろ!そう思うと少しむしゃくしゃしてきた。沖田さんもいないことだし思い切って聞いてやろう、なまえの好きな人とやらを。心の準備はいいか俺。


「でもさ、なまえも土方さんに全然アピールしてないだろ」

「土方くん?」

「この間出かけた時に言ってた好きな人」

「…あー、ああ、あー。そういうことですか」


これは図星をつかれて動揺しているな!自分は行動しないくせに俺にはとやかく言うからだ!ざまーみやがれなまえめ!

としたり顔で見てやればなまえはしばらく難しい顔をしたまま固まっていた。そんなに考え込んでこれからいきなり土方さんに毎日アピールしだしたらそれこそ堪ったもんではないのでそろそろこちらの世界に戻ってきて欲しいのだけど。


「わかった。毎日”土方くん”にアピールしようかな」


ああ言わんこっちゃない!やたらと俺を邪魔してくる沖田さんにプラスして土方さんなんて強豪が肩を並べてしまったらもう勝ち目はないに決まっているのに。山崎退の恋、このまま実らないのでしょうか神様。


「おはよう沖田くん」

「おう、ってなんでィこの化石」

「それザキくんだよ」

「見りゃ分からァ。馬鹿にしてんのか」

「沖田くんが聞いたんじゃん」

「なんでこうなってんのか聞いてんだ馬鹿女」

「馬鹿馬鹿言う方が馬鹿なんだよ馬鹿沖田くん」

「てめぇ会話する気あんのか」

「ごごごめん分かった説明するから髪引っ張らないで痛い痛い痛い」


また隣でなまえが沖田さんに弄られているのが視界の片隅に入ったけどそんなこと気にしている余裕は俺にはなくて。先ほどの会話を説明されたらしい沖田さんに「山崎ィ、今後の身の振り方考えた方がいいぜ」なんてわかりきったことを忠告されたけどアンタがそれ言うのかよと心の中で言い返すだけに留まった。

そのあとも何やら小声で二人が話しているのを見ていてまたナイーブな俺の心が折れる音がした、気がする。


「沖田くん、ザキくん本当面白いね」

「お前大概性格悪ィな」

「あなたに言われたらおしま痛い痛い痛いごめんなさいごめんなさい」


彼女は意地が悪い
- ナノ -