沖田さんの謎の行動により噂は瞬く間に広がっていった。しかしZ組以外から聞こえるこそこそとした声からよく耳にするのは「沖田総悟の彼女、あれ誰」


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そう、部活にも所属せず成績も普通、顔も特出して整っているわけではない(ただ俺からしたらすごく可愛い)つまるところこれと言って秀でたところはなく本当にごくごく普通の女の子なのだ、なまえは。普通と言うには中身が少し変わっているというか肝は座っているけど、接してみないとそんなことわからないわけで、まあようするに周りから見れば「あの沖田総悟」の彼女が何の変哲もない見てくれなことに驚いているんだろう。


長くなってしまったが、俺から一言付け足すとしたら


「むかつく」

「え、ザキくん不機嫌?」

「あ、いやなまえにじゃなくてちょっとほら、最近色々さ」

「あぁ、心配してくれてるの?」


沖田さんとなまえが付き合っているなんて根も葉も、いや根も葉もあるのだけど噂話に尻尾が生えて飛躍していっただけに過ぎないんだ。

実際あの時なまえはきっちりとクラスで弁解をしている。「私別に好きな人、いるんで」と。


「大丈夫だよ、別に。ただの噂話だからね」

「でもなまえは他に好きな人がいるのに嫌じゃないのかよ」

「好きな人本人が分かってくれてればそれでいいよ。周りはどうでも」

「…なに大人みたいなこと言ってんの」

「ザキくんより大人だからね」

「同い年だろ」

「精神的に大人なの」


ザキくん、鈍感だから。とにっこり笑うなまえは本当になにも気にしていない様子で、逆にそれが余計に腹立たしかった。

お前、土方さんのこと好きなんじゃなかったの。


「いいの?本当にそれで」

「いいの、っていうか実際私と沖田くんは付き合ってないわけだし」

「でも周りから見たら付き合ってることになってる」


俺が追求すると困ったような顔をされた。確かになまえが気にしていないと言うのならこれは俺の単なる嫉妬に過ぎないのかもしれない。


「沖田くんの悪戯にも困ったものだよね。廊下歩いてると人の視線で刺し殺されそうになる」

「そのうち本当に刺し殺されそうだけど」

「はは、確かに。沖田くんファンは怖いよ」

「怖いよ、って何かあったわけ?」

「うーん、まあ、ぼちぼち」


ぼちぼちってなんだ、ぼちぼちって。でも、と続けたなまえの言葉に嫌な汗が背中を伝った。取られんぞコイツ、って沖田さん、アンタにですか。


「でも、沖田くんが助けてくれた。それから一応危ないからって家まで送ってくれてるよ、なんか意外だよね」

「ふ、ふーん…」

「ザキくん、なんか汗すごいよ」

「ちょっと教室暑くない?あー暑い暑い」

「額の青筋はなに」

「暑すぎてイライラしちゃって」


今もし沖田さんが目の前にいたら後ろから消しゴムのカスを投げつけるくらいのことはしていたかもしれない。俺だってまだ彼女と下校したことなんてないのに羨まけしからん、ってやつだ。


彼女は大人ぶる
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