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「どんな風の吹き回しでィ」
相変わらず沖田は私の出席回数に関して目敏く見ている。銀八の家に居候するようになってからはほぼ毎日と言っていいほど登校してるってのに、まだ言うか。
「最近来てるじゃん」
「だからそれのこと言ってんでさァ」
「別に。卒業できるように心がけはじめた」
「ぜってー嘘だ」
めんどくさい。私はともかく沖田は教室中に楽しくお喋りする相手がたくさんいるんだからいちいち構わないで欲しい。私は何も面白いことできないよ。
「おい、退けよ」
「はい?」
「俺の席だ」
この時期の端っこの席は日当たりが良い。なのに一ヶ月二ヶ月経とうとも一目も見たことのないお隣さんの席はいつも空席だった。度々席を借りて教室にいるときはそこに座っていたけど真ん前の沖田に絡まれることを除けば素晴らしい席だと思っていた。
「みょうじに引き続き高杉まで来るってこりゃ明日槍が降るぜ」
「ああ、これが高杉」
「退けよ」
「どうもすいません」
すごい眼力で睨まれたので仕方ないなと立ち上がってそのまま隣の自分の席へ戻る。誰も座っていなかった椅子はやけに冷えていてちょっと心地よかった。
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