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「みょうじ?」
「あ」
お世辞にもかっこいいとは言えない薄らハゲといつも通りセックスして、お金をもらって、ホテルから出ておっさんとさよならして、唐突に呼ばれた自分の名字に振り返ると銀八がいた。
今日はこのあと友達の家に泊まる予定だったから珍しく一緒に退室したのが悪かった。
「あー、まぁ別に教師だからってそういうのにはゴチャゴチャ言わねぇから気にすんな」
「…先生には、アレが彼氏に見えたわけ?」
「じゃなかったら何なんだよ。あんな気色悪ィおっさんとホテルで何してた、って聞いて欲しいのか?」
「それは、」
「俺に聞かれて答えらんねーようなことしてんだろ」
絶対援交のことに気づいた癖に何も言われなくて、ああこいつも結局こうやって黙って私を見捨てる気なんだと思うと訳のわからない怒りが沸々と湧いてきてつい余計なことを言ってしまった。こんなの自分で悪いことしてますって言ってるようなもんじゃん。
「怒んないわけ?」
「怒って欲しいのはお前の方だろ」
「…何、それ。変に大人ぶっちゃってさ…本当はどうせ面倒だしこれ以上こいつとは関わらないでおこうとか、適当になかった事にしようとしてんでしょ?結局あんたもおんなじだ、問題児を登校させられたら給料でもあがんの?死ね、クソ教師っ、!」
走り出したあと後ろは振り返らなかった。振り返れなかった。
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