DEAD and LOVE | ナノ
「もうとにかくこの紙に思い当たる未練全部書いてけ」
「何個まで?」
「遠足のおやつじゃねーんだから成仏できそうなこと全部書けっつってんの!」
えー、と口を尖らせるガキみてーな幽霊に付き合ってはや数時間。ちっとも効率的な方法が思い当たらないことに痺れを切らし、片っ端からこいつの言うことを聞いてやろうと思い立った。数分紙と向き合ったあと、できた!と顔を上げたなまえが読み上げる。
「じゃあ、その一」
「おう」
「お団子食べたい」
「は?」
「お団子。死ぬ前に明日食べようって思ってたんだけど、生憎死んじゃったから」
「お前そんなんで成仏できんのか本当に…」
「分かんないけど、これも未練かなって。ダメ?」
「わーったよ、それで成仏できりゃいいんだからな」
と、いうことで団子屋に来てみたわけだが疑問に思うことが一つあった。
「つーか、幽霊って団子食えんの…?」
「分かんない」
「オイオイ食えなくてもし未練がこれだったらどうすんだよ」
「ずっと銀さんにつきまとう」
「勘弁してくれる!?」
ひどーい、なんてしかめっ面をするなまえに注文した団子を一本渡してやると普通の顔をして団子に食らいついた。
「なーんて。今朝こっそり冷蔵庫に入ってたいちご牛乳飲んだから食べれるとは思ってたんだけどねー」
「お前それ俺のやつううう!何人のもんで勝手に実験してんだよしばくぞ!」
「ねぇそれよりさ、これ他からはどんなふうに見えてるのかな?」
「いや話聞けよお前許さねーからな」
「私たち、不審者に見えるんじゃない?」
俺のいちご牛乳を勝手に飲んでおきながらいけしゃあしゃあと何を言ってんだこいつは。旨そうに団子を食べる姿に思わずイラッとしたがなまえが何を言いたいのか分からなかった為辺りを見渡してみた。すると小さい子供が口をあんぐりと開けたままこちらを見ているのが目に入る。
「なんだあのガキ。すげー顔してやがる」
「あのね、銀さんにしか私は見えてないわけだよ」
「あ?……あ、不審者って俺が一人で話してるように見えてるっつーことか?」
「いやまぁそれもあるけど」
「んだよ、他になんかあんのか」
「団子、どう見えてるのかな」
言われて店先で固まるガキの方を改めて見てみると、俺ではなく明らかに奥に座るなまえの方を見ていた。いや、なまえの姿は見えていないはずなので正確には宙に浮く団子を見ているんだろう。
「まさか浮いて見えてんのか」
「かもしれない」
「め、めんどくせぇ…!」
人様に怪奇現象を見せつけながらも、気にせず団子をむしゃむしゃと食べ続けているがこのまま街中でこんなことを続ければ騒ぎになりかねんと思い、とにかく早く食っちまえと急かす。
「つ、詰まった、団子詰まった死ぬ死ぬ」
「もう死んでんだろ」
「いやそうだけど早くお茶!ゲホッ」
「身体張った幽霊ジョークはいいから早くしてくれ。俺が怪奇現象起こしてるみてーじゃねぇか」
「怪奇現象連れて歩いてるんだから仕方ないと思う」
「つべこべ言わず早くしろって!」
「急かすなぁもう」
そう、これを食べ終えればもしかするともしかして成仏できるかもしれないのだから色んな意味で早く食い終わって欲しいのだ。
「ごちそうさまでした」
が、予想通り団子を食い終わったところでなまえは成仏しなかった。よし、次行こう!と今朝書き出した未練メモを取り出すこいつは本当に成仏する気があるのだろうか。
「わかってたけど団子じゃ成仏しないね!次!」
「…俺このままお前のやりたいことに付き合わされんの?」
「成仏して欲しかったらやるしかない!じゃあ、その二!」
「へいへい…」
「近所の猫ちゃんにさよならする!」
二つ目の未練を聞いて改めて気が遠くなる。ああ、この調子でいくのねと半ば諦め気味に団子屋を後にした。
団子
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