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夢を見るんだ。何度も何度も同じ夢を。俺はただのひとりの男で、お前もそう、ただの女。何度も何度もどうしようもない朝を迎える。本当、どうしようもない朝だ。しわくちゃになったシーツに、力なく横たわった俺。赤い髪がシーツに散らばって、まるで血でも流れているようだ。抜け殻のようなベッドにお前はいない。何の痕跡も残さずに、まるで初めからいなかったかのようだ。

夜が嫌いだ。だが、それ以上に朝が嫌いだった。

温もりの残ったベッドから這い出て、キッチンへ向かう。時刻は朝。5時17分。まだ空は少し白んでいて、窓を開けると冷たい風が部屋を横断した。俺は空っぽの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、そのまま口につけた。

ひんやりと冷たい水が、喉を伝って胃に落ちる。あつく熱った身体を冷やすように、透明な滴は体の中に染み込んだ。ああ、そういえば。あいつはコップを使えと口煩く俺に言ったものだった。直接口をつけないで、と小さな唇を不機嫌そうに尖らせて。

確かにふたつあったはずの歯ブラシも、取りに帰るのが面倒だからと置いたままになっていた洋服も、いつの間にか消えていて。引き止めることすら許されず。

洗面台の鏡に映る俺が、ひどく辛そうな表情を作っていた。それに気がついて、思わず吹き出す。はは、そんな顔が出来たんだな。知らなかったぞ、と。

お前が居ないと、抜け殻のようだ。そう言ってやりたいのは山々だったけれど。俺はお前が居なくなって初めて、たくさんの感情を知ったよ。

俺の人生からお前が消えて、それでも俺は生きていて。それでも世界は回ってんだ。

「あのさ、」

何度も何度も夢を見るんだ。何度も何度も同じ夢を。俺はシーツの海に溺れていて、お前は腕の中で眠っている。姿も、形も、匂いでさえも全部全部覚えているのに、お前の声だけが思い出せない。

お前の声で笑ってくれよ。お前の声で、俺の名前を呼んでくれよ。

ひとつひとつ、確かに消えていく。声の次は何だ?俺から何を奪ってく?

「レノ」

何度も何度も見た夢の、お前は俺に笑いかける。思い出せない声色で、確かに俺の名前を呼んだ。薄桃色の唇が嬉しそうに歪んだ。ふっくらとしたその隙間から、小さな白い歯が少しだけ覗いていた。

携帯端末がアラームを鳴らした。聞き覚えの無い音楽は、目覚ましのアラームなどではない。顔を顰めて画面を見やると、登録した覚えの無いメッセージが表示されていた。

『昨日、誕生日』

ふ、と口元が弧を描く。普通、そういうのは当日に登録するもんだろ。

俺はいつも。なんで終わってから、気が付くんだろうなあ。


仲良しおおとりちゃんより誕生日プレゼントでいただきました!
これは洋楽ですか?????ってくらいとりちゃんのセンスが大爆発しててめちゃめちゃのめちゃに好きです。大好きです。ありがとうございました。