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今の気分を表現するなら、最悪、が的確だ。

確かに、久しぶりの友人たちと飲みに行くとは聞いた。そんなに遅くならないとも聞いた。しかし、肝心なことをあいつは言わなかった。元彼も参加者の一人だと。
元彼とやらのことは、付き合い始めてすぐに調べ上げたから良く知っている。互いに未練たらたらのまま別れたんだってな。そんな男が同席すると分かれば反対されると思って、敢えて言わなかったのだろう。
狡賢くて、馬鹿で、愛おしい女だ。

宣言通り、可愛い可愛い彼女は深夜とも言えぬ時間に帰ってきた。オレがドス黒いものに支配されていることも知らず、酒の匂いを振りまいて、上機嫌に。
レノ〜! 弾んだ声が可愛くてムカつく。そうやって、あの元彼とやらの名前を呼んだんじゃねぇだろうな。ソファに座るオレの顔をひょっこり覗き込むこいつは、罪の意識など微塵も感じていないらしい。

「どうしたのレノ? 元気な、えっ!?」

手首を引っ張って後ろから抱き込むように座らせると、酔っ払いの彼女は大した抵抗もせずに腕の中に収まった。項に鼻を近づけて、短く二回息を吸う。酒以外の匂いがしないことに安心し、腹に回した腕の力を強くした。

「ふふ、レノ。なに?」
「……モトカレ」
「!」

耳を赤らめてくすぐったがっていた彼女の体がビクッと固まる。同じタークスの癖に馬鹿正直な反応をするので、笑いが小さくこみ上げた。

「オレが気付かないとでも思ってたのかよ」
「ちが、レノ。ちがうの」

何が違うんだよ。そう聞く前に、真っ白な首筋に噛みついた。べろ、と舌の腹で舐めて、犬歯を食い込ませる。ふつふつと立つ鳥肌と痛がる声に満足して、噛み痕のすぐ隣に強く吸い付いた。

「ひっ、あ、う」
「お前はオレのだろ」

何度も噛み、強く吸い付いて、首筋を横一直線に痕を付ける。鮮明な赤たちは、明日には紫がかった赤黒いグロテスクなものに変わっているだろう。付けた痕の一つ一つを唾液を絡めて舌で押し撫でたら、燻っていた独占欲が満たされたような気になった。

「はあ、レノ……」

息を乱す彼女の肩を掴んで、ソファに仰向けに倒す。痛みと快感で潤んだ目がゆらゆらとオレだけを映して、ゾクゾクと腰が熱くなった。こみ上げた唾液を飲み込むと、静かな室内にオレの喉が鳴る音がよく響いた、気がした。
圧し掛かるように覆いかぶさって、鎖骨のすぐ上あたりにまた噛みつく。オレの胸板を押す小さい手は弱弱しく、抵抗する気があるのか疑わしいほどだ。付いた噛み痕から、左に一直線、後ろから付けたキスマークと繋げる。それをべろりと舐めてから、今度は右に顔を進めて。

がぷ、ぢゅ、じゅる。ひいひい、あんあん。心地良いとは言えない声と音はしばらく続き、やがてそれが止んだころ。オレは体重をかけていた体を離して彼女を見下ろした。

「……オレの猫」

オレの口と歯でできた、赤い首輪。唾液でべとべとのそれを指先でなぞると、彼女はびくりと大げさに体を震わせて、そして、嬉しそうに笑った。

「わたしはレノの、だよ」


マイキティ

みみちゃんとプロット交換しました!
素敵なレノをありがとうございました!