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「ん、ふぅ、」
「名前、口開けて」

 孝支くんが優しく囁く。頬に添えられてた手が暖かくて、触れている唇が熱くて、頭がクラクラした。言われた通りに口を開くと、ふっと笑った孝支くんが、「いい子」と呟いた。柔らかい舌が、ぬるりと口内に侵入してくる。歯列をなぞったそれは、上顎の裏を舐め、私の舌をつんつんと突いた。おずおずと舌を差し出すと、すぐさま絡めとられて甘い声が出てしまう。私をギュッと抱きしめたまま、孝支くんはじゅるりと私の舌を吸って、それから、はあ、と唇を離した。二人の間に銀色の糸が引いて、それがふつりと切れる。いやらしい光景に、顔が熱くなった。名前、と掠れた声で私を呼んだ孝支くんが、服の上から胸の膨らみに触れて、身をよじってから、はっと気づく。反射的に、彼の手首を掴んでしまったので、孝支くんは驚いたように目を見開いた。目を合わせてられなくて、視線を彷徨わせてから彼の胸元を見つめる。恥ずかしさに声が震えた。

「ごめん、ね、孝支くん」
「どした?」
「あの、私、その、今日から、アレ、で、」
「…………あー、」

 孝支くんの手から力が抜けた。心臓がどくりと嫌な音を立てる。どうしよう。嫌われちゃうかも。でも、アレなのに、できないし。どうして、もっと早くに伝えておかなかったんだろう。知ってれば、孝支くんだって、困らなかったのに、私、どうしたら、

「名前」

 ぐるぐるとそんなことを考えていたら、ぽん、と頭の上に手が置かれる。そのまま、優しくゆっくりと撫でられた。思わず見上げると、困ったように微笑む孝支くんと目があった。

「今日はナシ」
「で、も、」
「俺は名前を大切にしたいから。な?」
「う、」

 優しくそう言われては、もう何も言えなくなってしまう。わかった? という言葉に頷くと、満足そうに笑った孝支くんの手が去っていてしまう。それが寂しくて、慌てて捕まえて引き寄せた。孝支くんの驚いた顔。

「あ、の、」
「まって、名前、ちょ、今無理」
「……お口で、する?」
「っ?! だーっ! もう! 女の子がそういうこと言うんじゃありません!」

 がばっと抱きついてきた孝支くんが、私の額にキスをする。顔をあげようと思ったけど、抱きしめられて身動きが取れなくなってしまった。頭の上で、孝支くんの大きなため息が聞こえる。それから、押し付けられた胸板から、どくどくと、ちょっと早い心臓の音も。孝支くん、どきどきしてくれてるんだ、私で。それが嬉しくて、ぎゅっと抱きつくと、孝支くんは優しく頭を撫でてくれた。

「だから、今日はここまでな」
「うん、孝支くん、大好き」
「……おー(はあ、生殺し)」

 孝支くんの匂いを胸いっぱいに吸ったら、幸せな気持ちになった。優しい孝支くん、大好きだよ。


200718