短編小説 | ナノ

永遠に続く約束


「晋助様!」



ドドドとでも聞こえてきそうな音をたてながら、来島また子は船の中を駆け抜ける。



「騒々しい、黙れまた子」



晋助様、と呼ばれた男は不快感を隠しもせずに言い放った。

しかしまた子は気にしていない。



「晋助様! 奴らがっ!」

「…奴ら?」

「白夜叉に桂、それに坂本とかいう訳のわからない毛玉みたいのが、ここに来てるッス!!」



たっぷり数秒の間を取った後、高杉は一言呟いた。



「寝言は寝て言え」

「し、晋助様!!」



にべもない返事に、また子は慌てて呼び止めるも、遠ざかる背中は、一向に止まる気配はない。

…どこからか、また子とは別の声が聞こえるまでは。



「あーあ、相変わらず冷てぇな、晋ちゃんはよ」

「全く、女子にはもっと優しくせねば、そのうちとんでもない目に会うと言っておったのに」

「アハハハハ、元気かや高杉! 久しぶりじゃのう」





紆余曲折を経て、部屋に落ち着いた4人だが、非常に空気が重い。

誰も一言も喋らないことに苛立ちを覚えた高杉が口を開いた。



「…で? テメェらいきなり何しに来やがった?」

「………高杉、約束を覚えているか」



質問には答えないまま、桂が切り出した。



「…覚えてねぇこともねぇ」

「…そうか、俺達は約束を果たしにきた。皆で決めた約束だ。今日は特別な日だしな」

「…特別な日、ねぇ」

「ええじゃなか、年に数回くらいただ酒酌み交わす日があっても」

「…そう、だな」





数時間後、不意に目を覚ました高杉は、周りで眠りこける銀時と坂本を見遣り、フッと笑みを零す。



「…起きたか、高杉」

「…ヅラ、」

「ヅラじゃない桂だ。…あの約束を貴様が覚えているとは思わなんだ」

「そんなに昔のことでもねぇだろうが」



そう告げて、高杉は手元に猪口と酒を引き寄せて、再び飲みだした。

そしてもう一つの猪口を桂に勧める。



「相変わらず、ザルだな高杉」

「テメェほどじゃねぇよ」

「…あぁ、そういえば言い忘れてたな。誕生日おめでとう高杉」



高杉は一瞬面食らったような顔をしていたが、すぐに笑みを浮かべる。



「…普通散々騒いだ後に言うか? そういうことは先に言えよ」

「…ふ、それもそうだな」





永遠に続く約束










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