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ピスメレシピ本をつくるD
2022/02/18 07:33
とにかくひとつ形にしてみることにしました。


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【解説】
 江戸時代の人々は【番付】が大好き。様々なものを相撲の番付表に見立て楽しんだそうだ。そのうちの一つに、幕末頃の惣菜番付『日々徳用倹約料理角力取組』がある。左側【魚類方】右側【精進方】に分かれており、中央には【行司】として沢庵や梅干しなどのご飯のお供が並べられている。これらは現代で言う【おかずランキング】のようなもので、江戸時代を生きた人々の日常の味と言えるだろう。しかし番付には直接調理法が載っているわけではないので、作り方も味も様々であると予想できる。『昆布と油揚げの煮物』も、差異はあるだろうが、精進方関脇に記載された『こぶあぶらげ』と同じものだろう。『賄い方がカゼで急に来られなくなった(中略)「今夜は料理が作れる隊士らでどうにかしてくれ」』の台詞から、不測の事態に【簡単でみんなが大好きなおかず】を作るのは自然の流れと言える。
 作中では烝が『万宝料理秘密箱』を片手に調理をしている場面が印象的だ。この文献は別名『卵百珍』と呼ばれているほど卵料理ばかりの本として知られている。昆布を使った精進の部は現存せず。しかし目次には確かに精進の部の文字があるため、現存していないだけで存在はしていたかもしれない。そのため今回は、同じ関西発の『年中番菜録』の昆布の調理の仕方を参考にした。というのも過去から現在に至るまでレシピには著作権がなく、番付に乗るような料理ならば似たものがたくさん存在するからである。
 昆布料理を調べるにあたり、昆布と油揚げを使った煮物は数あれど油で炒めてから煮る【炒め煮】のレシピは珍しい。江戸再現レシピにも頻繁に登場する『こぶあぶらげ』だが、最初から煮るものが一般的だったようだ。ここに何の意味があるのか考えた結果、【コク】と【香り】に行き着いた。それが誰かの経験からそうしているのだとしたら。烝が見たレシピにどう書いてあったのかは彼のみぞ知ることだが、もし彼が常日頃屋根裏で見ていた姉の料理からそうしていたのだとしたらどうだろうか。市村兄弟が見た「姉」の面影が、姿だけではなく料理にも現れていたのだとしたら、この一皿は山崎姉弟の結び付きなのではないか。油には屋台天ぷらに使われていた【菜種油】か【胡麻油】の可能性が高いとし、レシピの意図を汲み取って香り付けの役割も兼ねて今回は胡麻油で再現したが菜種油でも美味しくできる。
 また【貸本屋】の流行もあり、誰でも読める江戸料理本によって、より人々に認知されるようになった『昆布と油揚げの煮物』は、江戸時代の食卓のアイドル的存在だったと言えるだろう。

【調理法】
1、乾燥刻み昆布を水150ccに10分程浸けて戻し、水を切っておく。戻し汁も使うので別にしておく。
2、油揚げを油抜きし、水気を切ったあと1〜2cm幅に切る。
3、鍋に胡麻油を垂らし、昆布を炒め香ばしさを加える。
4、油揚げを加え軽く炒める。
5、昆布の戻し汁・酒・味醂・醤油を加え、水気が少なくなるまで煮る。





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