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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
また、会おうね
2018/02/17 15:28
最初に会った君は、小さくて真っ黒でやんちゃだったね。私はちょっと怖くて、自分は世話なんてしないって思ってたんだ。
歯が生えてくるとむず痒いのか、私の足に噛み付いてくるから、靴下はいつも変なところに穴が空いていて恥ずかしかった。
元気な君は散歩が大好きで、なかなか帰らせてくれなかった。
皆んなが出かけてしまうと、寂しくてよく悪戯をしていたね。お気に入りの帽子も手袋も、君にかかればすぐにボロ切れだ。
それでも帰って来ると、尻尾を振ってべろべろ手を舐めて来るんだ。
食いしん坊だった君は、食卓のものをよく盗み食いして怒られたね。
ご飯を食べていると、いつも私の膝に顎を置いて上目遣い。君が去った後はいつも服がびちゃびちゃだった。
私が一人暮らしから帰ってきた後は、毎日ずっと一緒だったね。引きこもっていた私を連れて、遠くまで行ったね。
そのゆっくりとした時間だけは、草の緑が鮮やかで、風の匂いは懐かしかった。ちょっとだけ、私の時計が動くような気持ちだったよ。
あまりに言うことをきかなくて、怒ってしまったこともあったね。
私たちは話すことができないから、いろんなことに気がついてあげられなかった。
ちょっとずつ、君の身体は弱っていった。
一月一日。お腹を壊したことから、病気の存在を知った。
食べることを嫌がり、散歩にも行けなくなった。
私にできることは、抱き上げて家まで運んだり、点滴を刺してあげたり、薬を飲ませたりすること。身体や口を拭いてあげること。病院へ連れていくこと。
他人にしてあげられることなんて、高が知れている。それでも、嬉しそうに見つめてくれる。
いつも誰かに期待しすぎてしまう私に、君が教えてくれたこと。君にそうしてもらえたから、きっと私は、もう一度人に優しくなれるかもしれない。
君は私にそっくりで、身体は大きいのに臆病で、犬見知りするような子だったね。
だからひとりにするのは心配だよ。少し長いお留守番だけど、待っていてくれるかな。
次に会ったら、お帰りってまた尻尾を振ってくれるかな。大好きなものたくさん食べて、君の好きなところへ行こう。どこまでも、行こうね。
左手に感じた、君の心臓の愛しい音がまだ手に残っているよ。
まだ生きているみたいなのに、動かない。
君はもうここにはいないから、「頑張ったね」って撫でても伝わらないのかな。
ありがとう、大好きだよ。頑張ったね、おやすみなさい、シオン。
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