いつの間にか、馴染んでいた
日が沈みきった頃、夕食の献立を考えつつ帰宅した。外気を纏う冷えた体を迎えてくれたのは、部屋の静寂と闇。
「・・・新八?神楽ぁー?・・・・・・誰も居ねぇのか?」
物音1つせず、飼っている大きな犬さえ外出しているようだった。
靴を脱ぎ、闇の廊下の中を壁づたいに進む。居間に繋がる襖をあけて、電気をパチッと付けた。
「ん?」
部屋の視界が良くなると、テーブルの上に手紙らしきものが置いてあるのに気付いた。
「新八からか?」
『銀さんへ
昨日も言いましたけど、銀さん忘れてると思うので一応手紙置いておきます。今日、姉上が仕事休みなので、神楽ちゃんがうちに泊まります。
明日の朝一緒に万事屋に行きますね。
じゃあ、おやすみなさい。←今日は夜更かしするアル!
今日は新八特製カレーネ!さみしへなったら遊びに来いヨ。
新八より←メガネ』
「あ・・・そういやぁ昨日言ってたっけな。誰が寂しく何かなるかよバカ!何だ『さみしへ』って!」
丁寧に書かれた文章に似合わない一文が付け足されていて、字が間違っていることから、それは神楽が書いたのだとすぐわかった。
ところどころ落書きもされていた手紙を自分の机に放り投げると、ドカッと椅子に腰掛ける。
「飯何にすっかなー・・・」
あれにしようか、これにしようかと自分の椅子に座りながら考えていると、いつもと何ら変わらない向き合った形で置かれたソファーが目に入った。
そのソファーは元々、万事屋を始めた頃に客用の椅子として買った物だ。しかし、今は客よりも従業員2人が座る事の方が多くなっている。
「客用に買ったってのに・・・どうなるかわかんねぇモンだな・・・」
ポツリと呟いて椅子から立ち上がると、頭を掻きながら台所に向かっていった。
「・・・1人カレーも、悪くねぇか」
end...