電化製品。
それは天人襲来後に栄えた、今や人間たちの生活の大半を支える代物である。もしこれがなくなれば、現代人はほとんど生活できなくなるだろう。


まるで今の万事屋のように・・・


「・・・」

「ごめん。壊れたアル」

「・・・え゛?!」







製品







坂田家のかなり遅い時間の朝食。見るも無残に割れた炊飯器を見て銀時の声は裏返った。


「おまッ?!なにしてくれてんのぉぉ!?!コレ何?!もと何だよコレ!!!」

「見ての通り炊飯器です「どっからだよ!!どっから見たら見ての通りだボケェェ!!」」


起床してご飯をよそおうとすると肝心の炊飯器がない。いつもある場所にない。炊飯器置き場には、なにかの残骸が居座っていた。


「もう、いい加減落ち着いてくださいよ。壊れちゃったものはしょうがないじゃないですか」

「新八よぉ、お前は『炊飯器のフタ開けようとしたらフタがヘコんだアル』って言われて納得できんのか?」

「いや・・・」

「なんで炊飯器のフタ開けようとしてヘコませんだよ。意味わかんねぇよ。なんで開かせるつもりが閉ざしてんだよ」

「と、とにかく、新しいの買わないといけませんね」


そんな金あるわけねぇだろとイラつく銀時を余所に、近所の大型電気屋さん、ピッグカメラに行くことにした。


「つーか、この問題の主犯はどこに行ったんだ」

「神楽ちゃんなら定春の散歩ですよ。もうすぐ帰ってきます」

「ったく・・・アイツのせいでひでぇ出費だっつーの」


銀時の口から愚痴しか出てこなくなってきたころ、神楽が定春と一緒に帰宅した。さすがに朝のことがあってか、いつもよりテンションは低めである。


「ただいまヨー」

「おかえり。今から電気屋さん行くから、神楽ちゃんも準備して」

「うんー・・・」


定春は大きなあくびを一つして、すぐにいつもの居間の隅で眠り始めた。


「・・・銀ちゃん」

「んだよ」

「・・・その、あの、」

「・・・」


いつもよりもおとなしい神楽に、銀時の怒鳴りちらしてやろうという思いは削がれていく。もういいから支度しろと言いかけて、銀時は自分の耳を疑った。


「今度は一気に20人前炊けるやつがいいネ。それ買うヨロシ」

「・・・新八ぃ、俺ちょっと耳鼻科行ってくるわ。なんかもう耳死んでるっぽいわ俺」

「僕の耳も死んでるみたいなんで、付き合います」


上機嫌にピッグカメラの歌を歌い、玄関に向かう神楽の声が、彼らの怒りに拍車をかけていた。











ガヤガヤと混雑する店内。たくさんの電化製品に囲まれて目を輝かせる神楽。

勝手にパソコンをいじりはじめたり、カメラに映る自分に驚いたり、最終的には大きなテレビのチャンネルを変え、マッサージチェアに座りながら見ている。


「新八くーん・・・俺もうアレなんだけど。無理なんだけど。さすがに心の広ーい銀さんでも、あのマッサージチェアでくつろいでる奴だけは許せねぇよ」

「銀さん、僕も同感です」


悪びれる様子も無くマッサージを受ける神楽に腹立たしさが隠しきれない2人。あきれて新八に「あのバカ引きずり戻してこい」というと、銀時は1人炊飯器コーナーへと歩いて行った。

それを知ってか知らずか、新八に声を掛けられても「何アルか?」と見向きもせず返事をする。


「神楽ちゃん、早く炊飯器さがしに行くよ!もとはと言えば神楽ちゃんが壊したんだからね!」

「悪かったって言ってるヨ」

「そんな風には見えねぇよ。どんな態度で悪いと思ってんの。少なくともマッサージチェアに座りながらTVのチャンネルいじくる奴は思ってないから!」

「TVいいところだったのにぃ」

新八に促されしぶしぶマッサージチェアから降りると、先に歩いて行った銀時を追いかけた。





種類が豊富な炊飯器機の中で、銀時は値札と睨み合っていた。手軽でなおかつ5人分以上は炊けるものを選ばなければならない。1人で3合はペロリと食べてしまう子が居るからだ。


「やっぱり大きさも値段もこんなもんだろ」

「銀ちゃん銀ちゃん!!こっちの方が良いネ!!コレ1つで力士5人分炊けるヨ!!」

「今すぐ元の場所に返してこいバカたれ」

「銀さん、それじゃあ小さすぎますよ。これくらいの方が良いんじゃないですか??」

「値札を見ろ値札を。お前が1番うちの家計状況知ってんだろ」




そして悩むこと揉めること数分・・・




「ありがとうございました!」

「良いの買えて良かったですね」

「おうよ。おい神楽、もうフタと秘孔間違えんなよ。エレベーターに閉じ込められた時みてぇのは2度ねぇと思ったが、お前は力の加減ってのを覚えろ」

「2度あることは3度あるヨ」

「誰がもう1回壊せっつったよ!!こいつ全然話聞いてねぇよ!!!」


結局買ったのは5合炊ける中でも1番安い炊飯器だった。お店の人にも勧められたし、米が炊けるならどれも同じだ。と銀時の一言で決まったのだった。

「じゃあ僕、大江戸スーパーに寄ってから万事屋に向かいます」

「んー。神楽行くぞ・・・あれ?神楽は?」

「銀さん、神楽ちゃんあそこです」

新八が指差した先には、「銀ちゃん!お金お金!」と駄菓子屋から手招きをしていた。その口にはすでに未払いの酢こんぶが放り込まれている。

口から出せ!という銀時の努力もむなしく、駄菓子屋のお婆さんに代金を催促されしぶしぶ支払うこととなった。


「おいコラ神楽。出費が止まらねんだけど。目まぐるしいぐらい金が動いてるんだけど」

「なんとかなるヨ」

「ならねぇよ!しばらく米しか食うモンねぇからな。てめぇの所為で坂田家の食卓バランスはガタガタだよ。栄養もへったくれもねぇよ」

「そんなもん元々なかったアル」

「・・・はぁ・・・」

「・・・」


隣で、ため息をついた銀時を見て神楽の心がチクリと痛む。謝るタイミングを逃してしまった神楽は、あまのじゃくな行動を取らずにいられなくなり、それがまた余計に銀時たちを困らせる結果となってしまっていた。

左手に持った未開封の酢コンブを軽く握り直して、足を止めた。


「・・・」

「・・・おい神楽!置いてくぞ!」

「・・・銀ちゃん、」


くちゃくちゃと酢コンブを食べていた神楽が噛むのを止め、左手の1箱を差し出した。


「・・・炊飯器・・・壊してごめんネ」

「・・・」

「今度はもっと優しくフタ押すアル。銀ちゃんの分のご飯も、ちゃんととっとくヨ」

「・・・馬鹿かてめぇは」


神楽が差し出した酢コンブも受け取らず、いつもの声色で言った。


「なッ?!なにアルか?!せっかく・・・!!腹立つネ!!!」

「ガキが気なんか使ってんじゃねぇよ。たらふく食って外走り回って夜9時に寝ろ」


銀時がめんどくさそうに頭をボリボリと掻く。神楽は少し悩んだ後、黙って酢コンブの箱を大事にポケットへしまい込んだ。

神楽は少し先を歩く背中を追いかけ、その腕に抱き着いた。


「銀ちゃん!ご飯の上に酢コンブ乗せたら美味しいアルか!?」

「あぁ?んなもん美味しいわけ・・・・・・いや、案外茶漬けとかにしたら美味ぇかも」

「本当アルか?!さっそく夕飯のときやってみるネ!!」



夕食も決まり、新しい酢コンブ茶漬けというレパートリーも増え、万事屋に向かって意気揚々と歩く2人だった・・・。




end...












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