「・・・おいおいおい、なんだこのニュース」
「?なんですか銀さん」
「この見出し見てみろよ新八−。ずいぶんと汚れた国になったモンだ。人間薄汚れたら終めぇだってのによ」
「最近こんな記事よく書かれてますよね。ほんと、情けないです」
「だいたい大人が子供を金で買うってなんだよ。弱いものいじめの延長ですか?職権乱用ですか?自分の一時の快楽ばかり求めやがって。腐ってんな」
「どうしてそういう心無い事が出来るんでしょうか。そんな大人がいるなら、必死で助けを求めようとしてる子も手を伸ばしたくなくなりますよ。これだから大人は信用されないんです」
「助けを求めた手を振り払われた時の気持ちがわからねぇとはな。・・・つーかなんだこの次の記事、昼ドラかよ。「DV急増」だとよ。なにがドメスティックバイオレンスだコノヤロー。てめぇで愛した女に手ぇ出すなんざ、男である資格ねんだよ。伝わらねぇ愛情なんてのは、愛情とは呼ばねぇ。去勢して腎臓なり金〇なり売ってこいやボケ。一生を持って償えバカヤロー」
「ま、またですかそれ・・・。でもそれが手っ取り早いかも・・・」
「他にも前みたニュースでこんなのがあってよー」
「どんなのですか?」
「・・・学び舎でいじめがあったとして、相談を持ちかけた弟子の話を聞いてやらねぇ師が増えてるらしい。聞いてやったとしても、その後何もしねぇ腑抜けもいるみてぇだ。そんな奴は最初っから何もしてねぇのと同じだ」
「銀さん・・・?」
「差し出された手も握ろうとしないで見て見ぬふりする奴のどこが師だ」
「・・・」
「・・・胸糞悪いなぁ、オイ」
「・・・誰かが誰かを傷つけても、助けを求められなくなったら・・・。そんな世界、嫌です」
「・・・新八、どんなやつが人を傷つけるかわかるか?」
「え・・・いや、わかりません・・・」
「人に傷つけられたことのない奴が誰かを傷つけるんじゃねぇ。人を傷つけても、その自分の行いに対して己の心に痛みを感じねぇ奴が人を傷つけるんだ」
「・・・」
「極論で言うとなぁ、『どうして人を殺したらいけないのか』という質問があったとする。だが『じゃあ君は殺されても良いのか』と問われると、もちろん答えは『NO』だ。つまり、『自分』以外を同じ人間として認識していねぇんだよ。だから人に刀向けて身体突き抜けたときに流れる血を見て、ハッ・・・っとすんだ。こいつも『自分』と同じ人間なんだ、ってな」
「そんな・・・」
「そんな奴らばっかの国と世界で、心に何の痛みも感じねぇ者同士で変わることなんざ何もねぇのさ」
「・・・」
「そんな暗い顔をさせるためにこんな話したわけじゃねーよ、ぱっつぁん」
「いや、でも・・・・」
「もしこんな汚ねぇとこだけの世界なら、俺だってとっくに捨ててるよ」
「・・・僕もです」
「だろ?でもなぁ・・・それだけで成り立ってるわけじゃねぇんだよ。よーく考えてみろ。どんなに小さな事でも良い事ってのは必ず起こってるモンだ」
「私今日良い事あったヨ!」
「あ、神楽ちゃんお帰り。回覧板持って行ってくれてありがとね」
「うん」
「じゃー、神楽。言ってみろ」
「酢コンブ食べれたアル!」
「え、・・・そんなので良いの?」
「良いんだよ、そういうことを見つけるのはすげーことなんだぞ」
「さすが私!!天才の神楽ちゃんネ!」
「じゃぁ僕は・・・歯磨き粉がキレイに歯ブラシに乗ったこととか」
「・・・まぁ地味だけど良い事だな」
「さすが新八アル」
「なんか褒められてるっぽいけど全然嬉しくないんだけど」
「そういう小さいところから発見できる幸せも、悲しいかな何かを失った時に気づく人の優しさからくる幸せってモンもあるはずだ。そういうふうに出来てんだよ、世の中は」
「よく考えてみるとそうかもしれないですね。本当に些細なことでも嬉しい事はいっぱいあるかもしれない」
「私酢コンブとご飯とたくあんがあれば幸せヨ!」
「銀さんは、どんなことが幸せなんですか?」
「俺か?・・そーさなぁ・・・まず朝晴れてっと、それだけでテンションあがるな」
「・・・」
「あとは仕事の依頼が来て、報酬もらって・・・お前らと飯食って、喧嘩して笑って過ごす時間が1番幸せだな」
「・・・銀さん(ちゃん)・・・・・」
「やっぱこんなモンじゃね?」
「駄目ヨ。もっとインパクトがないと客が寄り付かないアル」
「ねぇ、なんでこんな・・・ってか、さっきから台本読んでるだけなんですけど・・・何なんですかコレ。僕話聞いてませんよ」
「アレ、俺言わなかったっけ?これ『万事屋の宣伝』だから」
「・・・は?」
「こんなに世間に対して色々考えてますっていうカモへの宣伝ネ」
「ちょっと!!お客さんの事何カモとか言ってんの!?!」
「こんぐらい心やさしい従業員で活動してまーすみたいな感じでやらねぇと、カモの財布の紐がゆるまねんだよ」
「お前ら今までの感動を返せェェェ!!!!!」
end
おまけ
「・・・まぁ、些細なことでも幸せってのは転がってるってことだけは、銀さん保障するけどな」
「なんかもう信じられないんですけど・・・」