「誰だって
泣きながら産まれるんだ」

by銀時











「ぎゃぁぁあ!!」

「なっ・・・なんだ!?」

「!びっくりしたぁ・・・。赤ちゃん・・・みたいですね」

「めっちゃ泣いてるアル」

久々の依頼は電車を乗り継いだ先にあるお屋敷から。なんでも、屋敷の離れにある倉庫の荷物を運んでほしいとのことらしい。

そこへ向かう途中、電車に乗り込んだ万事屋3人は車内に響く大きな泣き声を耳にする。


「すっげ・・・電車中に響いてんな」

「お母さんも困っちゃってますね;」

「最近よく見かけるネ。ベビーカーに赤ん坊乗せて電車に乗る親子」


平日の昼前ともあって車内にあまり人はいないが、それなりに席は埋まっていて、吊革に掴まっている人も見受けられる。

出入り口付近に立っていた彼らは、電車の連結部分に立つ親子を見ていた。


「それにしても・・・すごいですね」

「正直うるさいアル」

「でもあのお母さんも必死だよ?」

「・・・本当ネ」

「泣き止まねぇなぁ・・・」


赤ん坊の泣き声に苛ついた神楽も、母親が必死になって泣き止まそうとしている様子を見て心を落ち着かせた。

耳を塞ぎたくなる泣き声に、1番うるさいと言いそうなのは銀時だが、彼の口からその言葉が出ることはない。


「きっと新米マミーアルな」

「そうだね。慣れていないんだろうな・・・」

「でも、ここまで泣いてたら・・・私なら一旦電車を降りて、『たかいたかーい』ってあやすネ。大抵のガキはそれで泣き止むヨ」

「僕もそうかなぁ。やっぱり周りの視線が怖いし・・・」

「急いでるから降ろせねぇって事もあるだろうけどな。まぁ、ベビーカーが他の乗客に当たらないように気を配るとかすれば、まだマシだろ」

「ぶつかっても謝らない人居ますよね」

「そういう奴は赤ん坊と電車に乗る資格ないアル」


万事屋3人で繰り広げられる『車内でのベビーカーマナー』

彼らの意見がまとまったその時、泣き声とは別の怒鳴り声が車内に響いた。


「うるせんだよ!!!さっさと黙らせろ!!!」

「っ・・・すみませんッ・・・」

「謝れなんて言ってねぇんだよ!!!黙らせろっつってんだ!!!」


例の親子に1人、サラリーマンの男が怒鳴り散らしている。周りの乗客は見て見ぬ振りをし、男は尚も声を荒げ母親を追い詰めていく。


「あの男の方が煩ぇじゃねぇか!?」

「銀さんッ、早く助けましょう!!」


新八に言われ、銀時が止めに入ろうと向かう直前、とうとう母親は堪えきれずに泣き出してしまった。


「あいつ・・・!!マミー泣かしたネ・・・許さないッ!!!」




ダダッ






「あっ神楽ちゃん!?」

「神楽ッ」



怒りを露わにした神楽が銀時よりも先に母親の元に駆け寄った。



「おいッ!!」

「?・・・なんだ嬢ちゃん」

「お前ッ、この人達に謝れヨ!!」

「なにぃ・・・?」


殴ってやろうとした神楽も、ここは電車の中。他にも乗客が居ることを考えると、安易に手は出せなかった。

しきりに謝れと繰り返す神楽に腹が立ったのか、男が親子から離れ、神楽に近づく。


「黙って聞いてりゃなんだガキ・・・?」

「そんなガキに謝れなんて言われてるガキ以下は誰アル?」

「!?てめぇッ!!!」




ドンッッッ





男は神楽の肩を勢い良く押した。
電車の揺れの所為でバランスを崩した神楽が倒れる。








ドサッ





「ッ・・・?」








「おい、無鉄砲に飛び出すんじゃねぇよ」


「ぎ・・・銀ちゃん!」


倒れ掛けた神楽を支えたのは、いつものやる気の無い目をした銀時だった。


「神楽ちゃん大丈夫;?」

「うん、平気ヨ」


銀時によって、彼の後ろに立つ形となった神楽と新八。
2人共、銀時の肩越しから男を睨みつけている。

銀時は自分を警戒する男を真っ直ぐ見て言い放った。


「・・・なぁ、あんた・・・仕事辞めろって言われたらどうするよ?」

「は?」

「良いから答えろ。仕事辞めろって言われたらどうする」


銀時の質問はあまりに唐突で、周囲どころか神楽や新八も驚いている。


そんな2人に、『良いから任せろ』と彼の背中が語っていた。


「・・・決まってるだろ。生活出来なくて困る」

「俺もそうだ。もし今から行く仕事が無くなっちまえば、金が貰えねぇからいちご牛乳もパフェも食えなくなる」

「え、そっちの心配ですか?万事屋の食事とか生活費じゃなくて?」

新八の突っ込みは見事に無視され、話は進んでいく。


「泣くことは赤ん坊にとって立派な仕事の内の1つ」

「・・・」

「仕事辞めて困るのはあんたも俺も、・・・この赤ん坊も同じだ」

「・・・・・」

「車内の限られた時間ぐらい大目に見てやろうや。・・・ガキの癖に仕事熱心じゃねぇか」


銀時が話し終わると同時に、次の停車駅のアナウンスが聞こえてきた。


いつの間にか泣き止んで、笑顔を魅せた赤ん坊の笑い声と一緒に・・・











「良かったですね、あの親子。降りるときお母さんも赤ちゃんも笑ってましたし」

「私、あの男がちゃんと謝罪したからすっきりしたアル!」

「そーだな。一件落着って事だ」

「・・・でも、駅を通り過ぎてましたね」

「急行乗っちゃったから6駅すっ飛ばしてたヨ」

「たまにはこんな日もあるだろ。意外な仕事が入る日、とかな・・・」





end...








…………………………………


読んでいただきありがとうございます!
今回も万事屋のみんなの声を借りて書いてみました!

実は・・・これ実話なんです。

『助け合い』を大切に。
『譲り合い』を大事に。

これが電車内のマナーかと・・・。

最後まで読んでくださり
ありがとうございました!

ginkuma







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