万事屋の居間にて。
腰を低く落とし、戦闘体勢の影が3つ。

「負ける気は無いですが…まさか…僕らが敵対することになるなんて、ね…」
「ああ…俺もビックリだぜ。」
「…でも、私達はそれぞれ、例え死んでも貫き通さなきゃなんないモンがあるネ。」
「同感だ。貫き通さず逃げたら、それは命捨てたも同然。俺達は、どんなにカッコ悪ィ護り方でも、己を通さにゃなんねぇ。」
「…残念です。和解は無理みたいですね。」
「当たり前ネ。…2人まとめてぶっ潰すアル!」

ドンッ!

神楽が床を蹴って飛び上がる。
同時に銀時は、新八の襟を掴み投げた。

「うわ、!」
「ほあたァァァ!!」

神楽の、重力が手伝って加速した蹴りが振り下ろされて、新八にめり込む。

「ッしゃぁっ!いっちょあがり、…!!」

だが銀時の笑顔はすぐに引きつった。

湯呑みが銀時の背後の壁で弾けたからだ。

湯呑みの破片は跳ね返り、銀時の頬に傷をつくる。
ツウ、と血が一筋垂れた。

「やるじゃねぇか、新八。」
「言ったでしょう、負ける気はないって。」

新八はゆらりと立ち上がった。

「…私も、まずは厄介な銀ちゃんから蹴落とすことにするネ。」

神楽が跳躍して、銀時の顔面へ、全体重を乗せた跳び蹴りを放つ。
同時に新八が、テレビのリモコンを銀時の鼻先目掛けて投げた。

だが銀時は驚くことは勿論、焦ることもなく、不敵な笑みを浮かべてリモコンを左手で掴み、同じように神楽の足の衝撃も右手で殺した。

「っな!」
「はいリモコンゲーッツ。抜かったな、新八ィ。」
「く、くそ!」
「っく!」

神楽が銀時の手から逃れようと身を捩る。
銀時はそんな神楽を、軽々と新八に投射した。

「グア!」

ガシャン!

銀時は怠そうにソファーへと脱力し、リモコンにてテレビの電源を入れた。

『本日のゲストは、お天気キャスターの顔、結野アナです!』
「おっしゃ丁度だ。やりぃ。」

銀時がガッツポーズをすると、ダメージからいち早く回復した神楽が再び跳躍。

「うぉ!」
「そんなんどーでもいいネ早く回して『渡る世間』のピン子特集見せろや天パ!」

すると瓦礫の中から血まみれの新八が飛び出してきた。

「断固お通ちゃん!お通ちゃんの番組にィィィィ!!」
「うわっ新八興奮して超鼻血出してんだけど!」
「マジキモイアル!」
「オメーらの手によって鼻血っつーか血まみれなんだよ!」
「うぎゃぁぁ!!さわんなっつってるネ!」
「いだっ神楽髪ひっぱんな、あいたたハゲるっ…!てめコノヤロォォォ!!」

再び無意味な抗争が勃発する。

「「「ウガァァァァア!!」」」

3人がうるさかったからだろうか。
すると、定春が眠たげだがゆっくり体を起こした。
暴れる三人を一瞥し、テレビの前へとのそのそ進む。

定春のおかしな行動に気がついた三人は、これから起こりうるであろう嫌な予感に動きを止めた。

「…さ、定春…?」

白い巨大な犬は、その大きな前足で、テレビを張り倒した。


「「「っぎゃぁぁああああ!」」」



…しばらく万事屋では、チャンネル争いの煩い騒音と叫び声は聞こえなくなったそうな。




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三人のチャンネル争いは命懸けだと思います。







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