「じゃ、今日からお前ら全員地学部の生徒だから」

「「「「「・・・は?」」」」」







抜けた日々2









「ちょっと・・・先生、なに言ってるのかよくわかんないんですけど」

「俺もよくわかんねぇから、良いンじゃね?」

「いや良くないだろ」


入学式を終え、教室に戻ったZ組。大幅に遅刻してきた担任の銀八だが、そのことに慣れている志村新八がツッコミを入れることはない。

しかし教壇に立った担任の第一声には、疑問の声をあげるしかなかった。


「地学部って(モグモグ)あの(モグモグ)もじゃ頭のアルか?(モグモグ)」

「そうだ。そのもじゃ頭が、今1人しかいない地学部の部員を増やそうと募集してる。だからお前ら入っとけ。ちなみに活動はー・・・月・水・金の週3で集合は18時以降、主な活動内容は『夜空の星を見上げ続ければ何か見えてくるぜよ!』・・・以上」


くるり、とまとめられたプリントを広げて、書いてある通りに読み上げた。


「それ活動してるんですか?星を見上げるって・・・部員数1人でも、むしろ坂本先生だけでも出来そうなんですけど」

「俺もそう思う」

「思ってるのかよ!!」


活動の緩さでは、銀魂高校随一を誇るであろう『地学部』。失礼ではあるが、その内容ではなかなか入部希望者は現れないだろう。


「どうせお前ら暇だろ?」

「暇じゃないネ!私だって女子高生アル!むっちゃ忙しいヨ!」

「何がどう忙しいンだよ」

「ご飯食べるのに忙しいネ!」

「それは忙しいとは言わねぇよ」

「美味しいもの食べるために留学してきたんだから忙しいアル!」

「そんな理由で留学するな馬鹿たれ。国に帰れ」


神楽の愚痴を皮切りに、次々と不満の声が上がり始める。

一斉に教室内が騒がしくなるが、銀八は眉間にしわを寄せることなく、気怠そうにしているだけだった。


「せんせー、俺バイトあるんでパスしまさァ」

「わかった。じゃあ18時に屋上で待っててくれ、沖田副部長」

「耳掃除ぐらいしてくだせェ。誰が副部長ですかィ?」

「今マヨネーズとわさびを混ぜている誰かだ」

「てめッ!?総悟ォォォ!!!」



土方の鞄からいつ盗ったのか、赤いふたでお馴染みのマヨネーズ。

それに、持参したであろうチューブ型わさびを混ぜようとしていた。

銀八により、沖田は現行犯として土方に見つかった。


「先生、僕もエリザベスも塾があるので、地学部には入部せず帰ります」

「白い化け物は看板使ってカンニングするから学問に不向きだ」

「白い化け物じゃない。エリザベスです」

「前回の期末試験の事は目をつぶってやるから、地学部入部しなさい」

「先生、エリザベスはそんな事しません」

そうはっきり言いつつも自分の席から、エリザベスの方へ振り返り、事実を確認しだす桂。

教室の後ろの方にいる白い化け物が、看板をちらつかせていた。



ガタタッ



「!・・・高杉、いくら今日が入学式で午前中に帰れるとしても、まだ早いぞ」


椅子から立ち上がった1人の少年。彼は最近学校に来るようになった不良少年の高杉晋助だ。


「・・・銀八ィ、」

「あ?」

「先に屋上行ってるぜ」

「入部希望かよ!お前が乗り気だとは思わなかったわ!!」


まさかの不良少年が星空好きとは、銀八も願ったり叶ったりである。


「確か地学部って陸奥ちゃんが入ってる部活よね。でも私もバイトあるし・・・ねぇ、九ちゃんも塾があるわよね?」

「うん。でもお妙ちゃんがやるなら僕も協力するよ」

「あれ?!奇遇だなー!!僕もお妙さんがやるなら入部しようと思ってるんですよ!!」

「てんめぇはまた人の話を盗み聞きしやがったなァァァ!!!」

「お妙さ・・・!?!ぎゃァァァ!!!」

「土方さん、入部したらマヨネーズ1年分貰えるらしいですぜ?」

「誰がそんな幼稚な嘘に騙されるかよ」

「あ、じゃあ売店のマヨネーズコーナー撤去して貰いまさァ。せっかく売店のおばちゃんが提案したってのに。可哀想でィ」

「先生、俺マヨネーズ部の部長希望します」

「誰かあいつを保健室へ連れていけ」


なんとか地学部を存続させてやりたいと奮闘するが、高杉と土方(マヨネーズ部設立希望)を除く他の生徒はバイトや塾、受験生であることや、むしろ高校3年で入部することがどうなのかなど、不安な声が多く寄せられた。


「お前らちょっと話聞け、HRのついでに話したいことがある」


席を立った高杉をもう1度座らせ、教壇に手をつき話し始めた。


「星を見る。それは興味が無い奴には無駄な時間に思えるだろうな」

「・・・」

「けどなぁ・・・やってみて気付くこともある」

「・・・はい、」

「お前等も高校生活最後の1年間だ。悔いを残したくねぇだろ?」

「それは・・・思います」

「教師として言わせてもらえば、生徒1人たりとも悔いを残して欲しくねぇのが本音だ」

「・・・」

「この際入部しろとはもう言わねぇ。星見る気が無ぇ奴は来なくて良い。忙しい奴も無理しなくて良い」

「・・・・・」

「でも、・・・高校生活の思い出作りたい奴はもじゃ頭のクラス前に置いてあるこの紙に名前書いて、今月中に出せ。わかったな?…じゃ、HR始めるぞ」


銀八はプリントをくるりと巻いて仕舞うと、チョークを持って黒板に明日の予定を書き始めた・・・。



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