「あはははは!!!」

by 坂本










校庭に咲く、満開の桜。
緊張した面持ちで校門をくぐる新入生。彼らは、まだ制服に着せられている感があり、その様子は微笑ましい。


そんな初々しさが目立つ今日は、銀魂高校入学式。






抜けた日々






「おぉー!!!」


勢い良く開いた教室の扉。緊張した面持ちで着席していた新入生は、全員目を丸くして驚いている。


「おまんらの反応・・・まっこと初々しいのぉ!あはははは!!」


ズカズカと教室内に入ってきた『もじゃもじゃ頭』は教壇の前に立つと、突如笑い始めた。


「わしは坂本辰馬先生じゃ!みんなよろしく頼むぜよ!!」

好きなように呼びやー!


人懐っこい笑顔をみせながら軽い自己紹介を終えた坂本。新入生も自分たちの担任がこの人なのかと、多少の不安は有りつつも疑うこと無く受け入れた。


「皆に先生から最初のプレゼントぜよー」


何個もあるプリントの束の内1つを取って、輪ゴムを外す。プリントの丸まりを直すと、生徒の数を確認しながら丁寧に配る。

全ての生徒に行き渡ったのを確認すると、最上級の笑顔で話し始めた。


「じゃじゃーん!!今からこのクラスだけ特別に地学部説明会を、「しませんンンン!!!」ンぶッ!?!」


ドゴーンッッ




爆音と共にプリントから顔を上げた生徒たち。

しかし彼らの目に坂本の姿は映っていなかった。

代わりに白衣を着て眼鏡を掛けた銀髪の男が立っている。


「ちょっと目を離したらすぐこれだ!毎年毎年いい加減にしやがれ!!何だじゃじゃーんって!?」

「い・・・痛いぜよ〜あははは」


顔面に蹴りをお見舞いし、怒鳴ってはみたものの、壁に激突して血を流している坂本に、悪びれる様子はない。むしろ笑っている。


「早くテメェの教室戻れバカ!」


坂本の首根っこを掴み、引きずりながら教室を出て行った銀髪の男。

残された新入生は、これから始まる新生活に不安しか抱けなくなっていた・・・










「あはははは!!またバレてしもぉたき!」

「ったりめぇだこの馬鹿。どうせ他のクラスにも『このクラスだけ特別に』とか言って説明する気だったンだろ?」

「そんな事あるわけ無いとは言い切れなくもないような気がしないことも無いき」

「お前それ以上しゃべんな」


顔から血を流し笑う坂本の隣で、一緒に廊下を歩くのは坂田銀八。

坂本の入学式に起こす、『地学部入部届け事件』は、もはや毎年の恒例行事と化している。それを阻止する男も、毎年同じ人物・坂田銀八その人だった。


「金八ぃ、今年は見逃してくれても良いろー?」

「俺だって好きでこんなこと毎年やってンじゃ無ぇよ!減給掛かってっからやってンの!」

「減給ぐらい対したことないぜよ!腹括れ!」

「お前が事件起こさないっていう選択肢無ぇの?え、何…俺の所為?」


銀八は同僚のあまりの横暴な態度に、顔をひきつらせた。


「いくら廃部寸前っつー噂流れてても、まだ部員居るんだろ?」


白衣のポケットに突っ込んでいた手を片方だけ出し、坂本の持っていたプリントを指差す。

以前から坂本が顧問である地学部は、生徒数の減少により廃部が噂されていた。

同僚の銀八も、その噂は耳に入っていたのだ。


「そのプリントだって部員が書いてんじゃねぇの?」

「・・・まぁ。・・・けんど、これ書きゆぅは、3年の陸奥だけじゃ」

「1人しか募集用ポスター書く気無ぇなら廃部は免れねぇだろ」

「もう陸奥しかおらん」

「あ?」


冗談で言ったつもりが、返ってきた反応は銀八の予想と違っていた。

坂本が、輪ゴムで留められた多くのプリントの束を抱えなおし、苦笑する。


「地学部は、今・・・天文班に所属する3年の陸奥以外おらんがじゃ」

「・・・」

「陸奥に先輩っちゅうもんを味合わせたいけんど、なかなか上手くいかんのぉ」


「毎年、地学部説明会やってたのに・・・?誰も入ってねぇの?」


誰もいない廊下の先を見つめながら、やんわりと問う。


「陸奥が入部したと同時に同じ学年の子ぉらが何人か入って、陸奥以外すぐ辞めてしまったき。その後も後輩が入っては、すぐ辞めちゅう」

「陸奥ってやつが入学する前に居た生徒は?」

「入部届け提出したあとは、めったに来なかったぜよ!幽霊部員じゃ!あはははは!」

「あははって、お前なぁ・・・」


豪快に笑う坂本だが、いつもより声に張りがないように聞こえるのは気のせいだろうか。

「先輩も滅多に来ん。同期の子もおらん。後輩も誰もおらん中で、1人・・・つまらん部活じゃ」

「・・・」

「別に、わしは廃部になっても構わん」

「辰馬・・・」

「ただ、・・・この部が無くなるんを陸奥が嫌がっちゅう」

だから、残したいんじゃ。


「・・・そうか」




昔から生徒思いの坂本。

今抱えているプリントの束も、毎年必死で部員を集めているのも、
すべて…自分が顧問として受け持った、たった1人の生徒のため。

毎年坂本を教室に連れ戻している銀八は、誰よりも彼の努力を知っているつもりだった。


だが、それも『つもり』に過ぎなかったのかもしれない・・・



「仕方ねぇな」

「!、金八?」

「余っても、てめぇの頭じゃリサイクルなんて思い付かなそうだし、貰ってってやるよ。廃棄処分されるよりマシだ」


銀八はプリントの束を1つ奪うと、坂本より先に担当クラスがある階へと階段を登って行く。


その姿が、坂本の目には頼もしく見えた。


「・・・・・ 」

「あ、そうだ」

「!」


階段を登りきった銀八が下の階へ、顔だけを覗かせる。






「俺金八じゃねぇよ。銀だから、銀」





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