いない海












どれくらいの値打ちがあるだろう

今俺が生きている世界に、意味なんてあるんだろうか。すべてが無意味だと思い始めてる俺に、「疲れてんだよ」と傍で笑うやつは、もういない。

オヤジと出会って、背負った誇り。
手に入れた、家族。

奪われたのは、
俺の中の大きすぎる存在。

だがそんなこと、いちいち憂いていられるほど海は甘くない。


じゃあこれからどうすればいい。心の中の弱い自分が叫ぶ。どんな理想を描いたらいい?どんな希望を抱き、進んだらいい?

行き場のない気持ちは、誰にもわからない答えは、時と共に葬られていく。

サッチがこんな俺を見たらなんていうだろう。「暗ぇよ!マルコ!」とか言って、笑うんだろうか。

そんな馬鹿みたいに笑うお前につられて笑って、俺の憂鬱が吹き飛んじまえばいいのに。



決して捕まえることのできない、
花火みたいな光でも

もう一回、もう一回でいいんだ
たった一回でいい。


この手を伸ばしたい……


俺だけじゃない、家族を失って兄弟誰もが悲しみを抱いてる。

だけど、前を向こうと互いに支え合ってる。


臆病風に吹かれて、波風がたった海を再び愛することができるだろうか。



毎日毎分毎秒……考えすぎて、言葉につまる。気持ちを兄弟に打ち明けられない自分の不器用さが嫌いだ。でも、何もなかったかのように、器用に立ち振る舞う自分はもっと嫌いだ。



オヤジは、まだ自分の命を狙い続けるエースに、こう言ったことがあった。


「笑ってようが泣いていようが、怒っていようが何してようが、誰にだって平等に時が流れる。それなのにてめェは憎しみの中で人生を過ごすのか?無駄だとは思わねェか?アホンダラ」


「未来はてめェを呼んでるぜ」


その言葉を、今俺らは欲しているんだ



さよならが迎えにくること。そんなことは最初からわかっていた。いつだって、覚悟はしていた。


でも、もう一回。もう一回だけ。

何度だって、会いたいと思ってしまう。


オヤジや兄弟と逢えたことで、こんなにも世界が輝いて見えるなんて、想像もしていなかった。それが世の中の嫌われ者の海賊でも、単純だと笑われても。


感謝してるんだ。すごく。



船の進路を波にまかせて、
揺れて流れて

オヤジの誇りを心に宿して、
前に進むよ。


先に逝った奴に逢いたくなった時
柄じゃねぇけど、寂しくなった時


もう一回。もう一回だけ

胸の誇りに誓うよ。


兄弟たちの抱える悲しみも、明日へとつながる希望に変えてやる。


臆病風に吹かれて、波風がたった海を再びどれだけ愛することができるだろう。



もう一回、もう一回

もう一回、もう一回……



end...









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