幸せとは何かを
教えてくれた師がいた

同時に

悲しみとは何かを
師の命をもって知った


その後


戦いに明け暮れ、互いに信頼を築き、共に勝利を誓い合った…。


月日は流れ、大人になった俺たちは
戦から身を引いた。

交わらず、振り返らず、次々と離散していく。



頑なに退くことを拒み続けた

友を1人、戦場に残して・・・







〜第一章・壱〜






「朝から何の騒ぎだっつーの。銀さん頭痛ぇんだよ、二日酔いなんだよ。頼むから静かにしてくれよぱっつぁん」

「昨日飲みに行った銀さんが悪いんですよ。それに、今日大規模な掃除しますって前々から伝えてたじゃないですか」

「え゙ー・・・?俺が二日酔いじゃない日に変更しねぇ?」

「しねぇよ。つーかそんな日ねぇだろ。だいたいお酒は飲んでも呑まれるなって言うのに銀さんは・・・」

頭はガンガンと痛み、ガミガミと新八の説教が降り注ぐ寝室。

銀時は朝から散々だと嘆いていた。

布団から起き上がり、二日酔いの所為で力無くソファーに座った銀時に水が渡される。

それを飲み干し、改めて新八を見ると掃除グッズフル装備だったので、今日の掃除は免れないだろうと悟った。

「朝ご飯どうします?神楽ちゃんはもう食べちゃいましたよ」

「あ゙ー・・・良いや。あんまり腹減ってねぇし」

「じゃあ適当に掃除始めてますんで、銀さんも顔洗って水飲んで着替えて下さい」

「へいへい・・・」

いまだ痛む頭を抱え、返事だけはするも、行動に移そうとしない。

しかし、ゴミ出しから戻ってきた神楽に新八と同じことを言われ、文句を垂れながら活動を始めるのだった・・・










「神楽ちゃん神楽ちゃん、お前が食ってるそれは何ですかコノヤロー」

「『激ウマッ!!夢の名店コラボラーメン企画第1弾・背油こってりトンコツ味!!』アル」

「大正解〜・・・っておいィィ!!!それ俺が買ったカップラーメンだろが!!」

「だって名前書いてなかったヨ。代わりに私の名前が書いてあったネ」

「嘘つけェェ!!お前が俺の名前の上に自分の名前書いただけだろ!!隠しきれてねんだよ!!」

「隠す気なんてないアル!!私はいつだって正々堂々戦うネ!!」

「人のラーメン食っといて何と戦う気だてめぇは!!!開き直んな!!」

台所の戸棚の奥に隠しておいたはずのカップラーメンが、次々と神楽の腹の中におさまっていく。

銀時がトイレに行っていた数分の間に湯を沸かし、注ぎ、麺が食べれる柔らかさになっていたとは驚きだ。夜兎の食に対する執念は未知数ではないだろうか。

為す術のない銀時が出した仕返し方法は、子供の思いつきのようなものだった。

「お前1週間酢コンブ買う・食べる・欲しがるの禁止な」

「なんでヨ!?嫌アル!!」

「知るか!!お前が俺のラーメン食ったからだろ!!」

「そうやって権力で何もかも解決しようとする気アルか?!職権乱用ネ!!」

「どこがだよッ!?!」

「新八ー!!銀ちゃんが酢コンブ禁止って言うセクハラするアル!!」

「何とんでもねぇ嘘ついてんだコラ。どこの国に酢コンブ禁止がセクハラと同罪なんてのがあんだよ」

「2人とも変な言い合いしてないで早く掃除してよ」

はたきを手に持ち、銀時の寝室から顔を出す新八。先程朝ごはんを食べたはずの神楽が、現在進行形でラーメンを食べていることには敢えて触れない。

「銀さん、押し入れから色々出てきたんで要るものと要らないものと、分けてもらって良いですか?」

「押し入れぇ?別にそこは掃除しなくていいだろ。押しこんで入れる所なんだから」

「いや、押し入れって『押しこんで入れる所』って意味じゃないと思いますけど」

「ったく・・・どれ?」

髪をガシガシとかき乱すと、面倒臭そうに自室に向かい、押し入れの掃除に取りかかった。

1人リビングに残され、酢コンブ禁止令を出された神楽は、寝室から聞こえる2人の話し声を聞きながら苛立っていた。



「天パめ。最低アル。良いもん、今の内に銀ちゃんのヘソクリ探して勝手に買うもんネ」

ズズッっとラーメンをすすりながら、ソファーから銀時の机へと移動する。片手でカップを持ちながら、引き出しを次々と開けていった。

「レシート、依頼主からの名刺、インクの出ないペン、一昨年の卓上カレンダー・・・ろくな物入ってないアル」

ヘソクリのヘの字も見つからないまま、最後の引き出しをガサガサとあさっていると、妙な物を見つけた。

「・・・?何アル、これ・・・」

まるで誰にも見つからないように、隠すようにしまわれていた箱。今まで見てきた、ろくでもない物に比べて、これが異質な物だということは一目瞭然だった。

「へそくり発見アル。神楽ちゃんに不可能はないネ」

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、カップラーメンを机の上に置き、その隣に箱を取り出して置いた。

「・・・?、へそくりじゃない・・・?」

期待に胸を膨らませて箱を開けたが、中には深緑色の本のようなものが入っていただけだった。

パラパラとページをめくるが、中には何も書かれていない。

多少気になったのは、表紙や何も書かれていないページに、ところどころ丸い染みのようなものがあったぐらいだ。

「・・・銀ちゃんの大事な物なのかな?」

糖分以外無頓着な銀時が、わざわざ箱にしまって保管する本。

見てはいけない物を見つけてしまった気になり、神楽を罪悪感が襲う。

銀時に気づかれる前に、早く元の場所に戻さなければ。そう思い、急いで本を箱の中に入れて、しまおうとした。

ところが・・・

「神楽、お前に良いモンやる!」

「!!」



バシャッ









これが、すべての始まりだった。


next...











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