人、花、動物、森
全てが眠りにつくその時間は
何かが起こると言われている
痛むこころ 4
「さすがにまずかったんじゃないか?総督の前であんなこと言うのは・・・」
「仕方ねぇだろ。まさか聞かれてるとは思わなかったし。って言うか、お前ら教えろよな」
誰もが夢の中に居る頃、酒を酌み交わす鬼兵隊の男たち。
「いや、俺達だって聞かれてるとは思ってなかったし。なぁ?」
「あぁ。でも、まさか白夜叉が俺たちを庇うとは思わなかったな」
戦時中では貴重な酒を惜しげもなく注ぎ合う。それはまるで自分達の欲を満たしていくかのように。
「確かに。白夜叉が総督を止めてくれなかったら俺たち今頃・・・」
「なわけねぇよ。総督は俺たち斬れねぇって」
「なんでそんなこと言えるんだよ」
「これだけ戦が長引いて人数も減ってんだ。自分の手で、なーんて馬鹿な事しないだろうからな。俺たちは何をしても、総督どころか白夜叉だって手が出せねぇのさ」
そう言い、勝ち誇った笑みを浮かべた1人の男。注ぎ足そうと酒瓶を傾けたが1滴しか出て来ない。
舌打ちをし、飲み干した酒瓶を置いて新しい酒に手を伸ばした。その時だった。
「貸せ、酌してやるよ」
「あぁ、悪・・・!?!」
視界にちらつく銀髪。
こんな戦場に居る銀髪といえば『奴』しかいない。
「どうした、貸せよ」
「ぁッ・・・、しッ・・・!?!」
酔っていた所為か、周りの奴らが倒れていることに今になって気付く。もっとも、目の前に現れた銀髪のお陰で男の酔いなど吹っ飛んでしまったが・・・。
後ずさる男をゆっくりと壁際まで追い詰める。
「闇夜の飲み会ってのも、悪くねぇな」
「ッ」
「特に・・・」
ドンッッッッ
「陰口がつまみたァ、さぞかし格別だろうよォ」
最後の言葉が、気絶した男の耳に届く事はなかった・・・。
◆
「・・・お前ら、・・・何してんだ?」
「「「「総督!!おはようございます!!!」」」」
「はッ?」
朝、いつもの時間に目を覚ました高杉。今日の朝餉当番が自分だったことを思い出し、調理場へ向かった。
ところが、調理場には昨日、自分を抜刀させる程腹立たせた隊士達が、なぜか朝餉を作っている。そして無駄に礼儀正しくなっていた。
「どうなって・・・」
「おー高杉ぃ。早ぇな・・・」
調理場にやって来たが色々と理解できず立ちすくんでいた高杉に、あくびをしながら銀時が声をかける。
「何だ、今日の飯当番おまえらか」
「「「「ッ!?」」」」
銀時が眠そうな目を、朝餉を作る隊士達に向けて言うと、驚いたような怯えたような表情を浮かべ、言葉を発さず首を縦に振る。高杉はそれを不審に思い、そして勘付いた。
「銀時、お前・・・」
「あ?何?」
いつもと何ら変わらない銀時の様子に、高杉の口から出たのは・・・
「・・・寝癖で天パが悪化してるぜ」
「ンだとォォォ?!?」
いつもの憎まれ口だった。
end...
おまけ
「銀時、この部屋の壁に刀が刺さった跡があるんだか・・・何か知らないか?怪我人が居るかも知れぬ」
「知らねー。誰かが酔ってあけた穴だろ」
end...