地球からはるか遠く離れた宇宙・・・

とある上司と部下が言葉を交わしていた。












「陸奥、この仕事頼むき」

「了解。・・・頭、出掛けるがか?」

「ん?ちっくと地球に行ってくるぜよ!」

「まだ仕事が山のように残っちゅう。片付けてから行きや」

「久しぶりに金時にでも会いに行こうかのぉ!あははははッ!!」



ドゥンッッ



「・・・頭ぶち抜かれとうなかったら3秒以内に書類に目を通せ」

「む、陸奥には適わんのぉ・・・;」


宇宙空間をゆっくりと移動する快援隊の船。

坂本辰馬率いるそれは。天人と人間双方に利益をもたらす貿易を行っている。

そのため、たくさんの取引をまとめた書類にサインしなければならなかった。

「ワシは難しい事は何ちゃぁわからんき。むっちゃん頼むぜよー」

頭ともあろう者が部下に対して、両手を合わせ頼み込んでいる様子は、この船の上では日常茶飯事だ。

「むっちゃんじゃないき。頭のおまんがそんなでどうするがじゃ」

「よう言うろー?頭がしっかりせん所は、優秀な部下が居るって」

「わし、世辞は嫌いじゃ」

サバサバした性格の陸奥に、ばっさりと切り捨てられる坂本。

やむ終えず大量の書類に目を通す決心を固め、1つづつ片付け始めた。その表情はさっきまでと一変している。

久しぶりにやる気を出した頭を見て、気を利かせた陸奥がお茶でも淹れようと席を立った。


お茶を淹れて戻ってくると、もぬけの殻になっているとは知らず・・・。


「あんのッ・・・もじゃもじゃぁ・・・!!」







「・・・」

「おぉ!!金時!!久しぶりじゃのぉ!!ワシワシ!ワシじゃワ「ワシワシ詐欺は間に合ってまーす」ちょッ!?開けて開けて!!腕挟まってる!!戸に腕挟まっちゅう!!」

ちょうどお腹が空いてきた午後3時。

万事屋でTVを見ていた銀時は、突然の訪問客に惜しげもなく嫌がる顔をしてみせた。

その様子を全く気にせず、笑顔でお土産を渡したもじゃもじゃ頭。

お土産が『あんみつ』だった事もあってか。銀時は嫌な顔をして腕を戸で挟んだ割には、素直に坂本を家の中に招き入れた。

坂本を適当に座らせて、お土産のあんみつを食べ始める。

「・・・で、あの姉ちゃんに仕事まかせて来たってか」

「たまにはええじゃろ!ワシやち、遊びたいぜよ」

「仕事なめんなよゴラ!!?お前頭辞めれば?!つーか辞めろ!!」

何も気にしない性格(いわゆる馬鹿)で、大きな声で笑う所は昔から何一つ変わっていない。

「ん?いつもの2人はどこぜよ?」

キョロキョロと周りを見渡すと、大きな白い犬しか見当たらない。

あんみつを食べている銀時に目を向けると、思い出したように『あぁ、』と言って口の中にあるあんみつを呑み込んだ。

「あいつらならいねぇよ。新八は休みだし、神楽はガキ共と遊んでる」

「なんじゃ、暇を持て余してるっちゅう事か!」

「暇じゃねぇよ、万事屋の休日ってな」

「毎日が休日で羨ましいぜよー!」

「あ!!お前今遠まわしに馬鹿にしただろ?絶対ぇ馬鹿にしただろ?!あんみつと金置いてとっとと帰れ!!」

「銀時、冗談やちー。あははははッ!!」

思わず立ち上がって怒鳴ってしまい、何しに来たんだと怒った銀時に悪びれた様子も無く適当に謝る坂本。

「・・・つーか、本当何しに来たのお前」

再びソファーにドカッと座って、背もたれに寄りかかった。

「何しにって、・・・」

「なに?」

坂本を取り巻く空気が変わり、銀時も少し身構える。

彼の表情に笑顔が見られないと、調子が狂うのは昔からだと頭の隅で冷静に思った。




「お了ちゃんに会うために決まっちょろうが!」
「・・・・・・」

「あははははッ!!!」

「定春、殺れ」

「痛でででッ!!!なっなんじゃ!?目の前が真っ赤ぜよ?!」

不当な理由を述べた坂本に、定春の牙が突き刺さる。

そのまま坂本は血の流しすぎでぶっ倒れた。







「じゃ、ワシは帰るき」

陸奥に叱られるから、と坂本は帰るために玄関に向かい、下駄を履いた。

「血ぐらい拭いてけ馬鹿本」

「おぉ、すまんの」

「おいィィィ!!何俺の着物タオル替わりにして拭いてんだよ!?」

「・・・間違え「てねぇよな?!絶対ぇわざとだろ!?」」

坂本のもじゃもじゃ頭に銀時の拳が振り下ろされた。

「あぁもう!!帰れ帰れ!!お前がくるとろくな事無ぇよ!!」

「ひどいぜよー」

「シッシッ!!」

「ワシは犬か!」

まるで騒がしい犬を追い払うように手を動かした銀時。

それに苦笑しながら、坂本は引き戸に手をかけ銀時に背を向けた。




「・・・銀時、」

「今度は何だよ!」

「・・・元気そうで何よりじゃ。また、一緒に酒でも飲むぜよ」

「・・・金はお前持ちな」

「わかっちゅう」

振り返り、笑顔をみせた坂本は銀時に手を振り万事屋を後にした。




「・・・相変わらず、馬鹿だな」

台風が過ぎ去ったように静かになった万事屋の中。

銀時の一言が誰にも聞かれず吸い込まれていった。



end...







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