なるお年頃








「青春って甘酸っぱいアルか??」

「・・・は?」

「青春って何味ネ?酢コンブみたいな酸っぱさアルか?それとも梅干しの酸っぱさアルか?」

「青春がそんな爺婆臭ェのは死んでも嫌だ」

珍しく銀時が自分専用の椅子でジャンプではなく新聞…のTV欄を読んでいると、横に酢コンブを咥えた神楽がやってきた。

定春の散歩に出かけている最中に桂と出会い、彼から異国のTVドラマの話を聞かされ、神楽に『〈青春〉をしているか?』と聞いてきたらしい。

「だってヅラが言ってたヨ。『青春とは甘酸っぱいものだぞリーダー。甘くて、酸っぱくて・・・甘いのだ』って」

桂のマネをしながらしゃべる神楽。

甘くて酸っぱくて甘いって何だよ、と心の中で少々苛立ちながら、いつも桂から妙なことを教えられる神楽に、どう説明すれば良いか考える。

「アイツが言う事は当てにならねぇよ。青春の甘酸っぱさは、『酢の物』の酸っぱさから来てるって本気で信じてたんだからな」

「酢の物・・・」

神楽の思考回路の全てが酢の物で占められた時、銀時は再び新聞のTV欄を見始めた。

「じゃあ『酢の物』食べれば青春になれるアルか??」

「青春ってのは・・・なるとかならねぇとかじゃなくてだなぁ・・・」

なんせ14歳とは言え、ぶっ飛んでる性格の神楽に『青春』を説明するのは至難の業だ。

むしろ、銀時だって過去に青春を過ごしたとは言えない。

だから正直自分でもよくわからないのが本音だった。

「そうさなぁ・・・」

「うんうん」

「なんか・・・じれってぇ感じ?」

「ほぅ」

「空回りしちまうような・・・」

「おぉ・・・」

「落ち着かねーみてぇな・・・」

「へぇー」

「例えばー・・・ぁ、男が甘美な世界に片足を突っ込む・・・というかアレを突っ「言わせるかボケェェェ!!!」ぶべらァッ!!!」

回覧板を隣のヘドロの家に渡すという恐怖体験を終えた新八。

万事屋に帰ってくるなり彼の目に飛び込んできたのは、未成年の女性従業員に、見た目は大人だが中身は子供の糖尿寸前社長が言葉のセクハラをしている現場。

当然セクハラ社長は、メガネの従業員に盛大に粛清される羽目となった。

「真っ昼間っから何言ってるんですかアンタ!!」

「ちょッ!?まじコレ俺歯折れたんじゃね!?!あるべき所に歯がなさそうだよコレェェェ?!!」

「歯と一緒にてめぇの心も折ってやろうか!?あァン?!」

「新八ぃ、ついでにこのチューパットも折ってほしいネ」

口元を押さえる銀時に、拳を握って頭に血が上っている新八。

その彼らを冷静に、且ついつの間に取ってきたのか、手に持っているチューパットも折れと促す神楽。

「おおお落ち着け新八!!銀さんは神楽に『青春』とは何か、を説いてただけだって!!」

「そんな汚れた青春を誇らしげに説くな!!」

声を大にして言った新八のおかげで、神楽は銀時から卑猥な『青春』を教わることを免れた。

「じゃあ新八が教えてヨ、青春って何アルか?どうしたらなれるネ?」

ソファーに戻り、チューパットを食べながら、向かい合って座っている新八に神楽は問い掛けた。

「うーん・・・若いときに経験すること全てが『青春』って言うのかもしれないなぁ」

人間関係とか恋愛とかもね。


新八のわかりやすい説明に、神楽も納得したようで、残りの溶けたチューパットを飲みほした。

銀時はと言えば自分専用の椅子に座り、歯が欠けていないか鏡でチェックしている。

「・・・なんか私が想像してた『青春』と違うネ」

「そりゃ酢の物とは違ぇだろーよ」

「なんですか、酢の物って・・・」

青春と酢の物は間違っても一緒に想像出来ない。新八の疑問も、もっともだ。

「神楽ちゃんはどんなのを想像してたの?」

さっきの神楽の発言も気になったので、聞いてみる。

「・・・青い春だから、渋い感じだと思ったヨ。渋柿とか。口がしょぼしょぼするようなのだと思ったネ」

「どんな青春?!?」

「しょぼしょぼする『青春』って・・・結局爺婆臭ぇじゃねぇか!!」

桂が『青春』を酢の物と勘違いしていて、そんな桂から『青春』を教わった神楽なら、『しょぼしょぼ=青春』という発想が生まれても仕方ないのかもしれない。


銀時はすぐに桂の元へ行き、余計なことを教えるなと抗議したらしい。



end...







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