「あたしの上履き取った奴 今すぐ体育館裏に来なさい。来なかったら逃げたと見なす」


さあ かかってこい


「ちょ 困るんですけど銀河さん!私用で全校放送使わないでください!」

「これは天下分け目の戦い。あたしは戦いの狼煙をあげただけ」

「いや…意味わかんないんですけど」

「鳳。あんたは黙ってあたしの背中を見送りなさい」

「えぇ…」

「おいこら銀河。てめぇなに勝手に放送使ってんだ。許可取ってんのか 許可」

「もういません」


ここは乙女の戦場。あたしは勝つためにここに来た


「あんた なんなのあの放送」

「放送聴いて来たきたんでしょ。あんた達が一番わかってんじゃないの?」


あたしを取り囲んだのは きらきらもりもりな女の子。みんな普段の笑顔からは想像できない般若のような顔だ。仮面が剥がれた女とはこんなにも醜いもんなんだ。でもそんなのあたしに関係ない。この人たちを呼びだしたのは天下を取るためだ


「あんた達があたしにしてきた数々の悪行はこの際水に流してあげる」

「………は?」


上靴を隠されようが体操服をズタズタに切り裂かれようが痛くも痒くもないの。なにより苦痛なのは不本意にやらされてるテニス部マネージャー それに尽きる


「忘れてやるって言ってんの」


そのかわり


「あんた達 マネやって」


思いしれ あたしの苦労を


「え ちょっと あんた何言ってんのよ。え あたしたち ええ?」

「はッ!あたしでもできたのにできないの?それでも親衛隊?たかが知れてるよね」

「ッやってやるわよ!」


ふん。ちょろいな。安い挑発に乗ってきた親衛隊のひとりがあたしの肩を押した。あたしはそいつの胸倉を掴む


「但し。何があっても 絶対に 助けてやんないからね」


親衛隊の子たちは ごくり と唾を飲み込んだ。いかにあたしが精神的苦痛をあいつらから受けてきたか どれだけあたしの娯楽を犠牲にしてあいつらの世話をしてきたか思いしれ。そんな気持ちを込めて あたしは自分でも初めて聞いたくらいドスの聞いた声で彼女達に言った。ふんと鼻を鳴らしてあたしは体育館裏を後にした


「なんなの…あの子」


天下分け目の戦い
あたしは自由を手に入れた


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