お笑いホモコンビやら毒舌な後輩やらごんたくれやらの世話で今日も疲労困憊の俺。残り僅かな力を振り絞って玄関を開けば、きれいに揃えられた小人の靴。リビングからパタパタ聞こえる小さな足音。まさか、そう思った時には腹にものすごい衝撃。ああ、また大きくなったなあ


「久しぶりやな 銀河」


腹にしがみついた塊を抱る。プルプルと震えて丸まる我が姪にかわええなあもう、と口元を緩ませ撫でくりまわす。よく見ればいつもは無造作に跳ねる髪がびっちりと結われ赤いリボンを着けていた


「銀河 またママに意地悪されたんかいな」

「誰が意地悪やて」


地を這うような低音に、よしよしとあやす手が思わず止まる。怖!銀河めっちゃ怯えてるやん。姉の姿に気づいた途端がちり体を固まらすあたり、姉の自己満足着せ替えファッションショーがよっぽど苦痛だったらしい。まま、と呟いた声には明らかに拒絶が含まれている。かわいそうに


「いい加減にしいや。銀河もめっちゃ嫌がってるやん」

「やかましい あたしの唯一の楽しみを奪うんか。銀河ーおいでー。まだまだお洋服あんねんでぇ」

「うう…」


嫌そうやん


「銀河 このくらいでへこたれとったら蔵之介にかわいいってゆうてもらえんで」

「お兄ちゃん…」

「いやもう十分かわいい。文句ない銀河は十分かわ」

「黙らんかい。銀河 蔵之介にもーっとかわいいってゆうてもらいたないん?」


いやせやから銀河は十分かわええって。これ以上かわいくなって悪い虫でもついたらどないすんねん。着飾ることよりも、花や虫を愛でることが好きな銀河。心優しい銀河はそりゃもうかわいくてたまらない。できれば姉を反面教師として、そのままナチュラルな感じで大きくなってもらいたい。太陽の匂いがする旋毛はケバい香水なんかより百倍いいにおい


「お洋服着替えたら 蔵之介もいっぱい銀河はかわええってゆうてくれるで」


悪魔のように囁く姉に怯える銀河は俺の顔を見た。実の娘になんてことすんねん。よく似た目元にやるせない気持ちになりながら、見つめる銀河に苦笑いをした


「お着替え する」

「よう言うた!」

「え 銀河ええの?嫌なら嫌って言うてええんやで?」


心配すれば腕の中の銀河は左右に首を振った


「お兄ちゃんに たくさんかわいいって言うてもらいたい」


食べてもいいですか


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