この想いだけは紛れもない真実だ。彼を愛していたのは嘘じゃない
「ねえ銀河。今日の銀河は様子が変だ。何かあった?」
「な にも」
「なにもないなら どうして俺の目が見れないのかな」
赦してなんて言わない。だけどあたしは精市のことが大好きだ。だから誰にも奪われたくないと願ってしまったあたしの弱さ。その弱さが精市の命を奪うのだ
「お前が悔いてどうする」
「だって あたし…だって 」
精市は多くの人にその生を望まれ、沢山の救いを求められた。あたし一人に構う暇なんて無いも同然。大好きな精市を奪った人達が憎い。あたしを大切にしてくれない精市が許せない。無い物ねだりの我儘で、あたしは精市を売り飛ばした。一時の怒りに身を任せた結果、あたしは大切な人を裏切ってしまったのだ。いくら悔いてももう遅い。愚か者は誰でもない、あたしだ
「精市 ごめんなさいごめ なさい…ごめんなさい」
「銀河」
馬鹿だ愚かだと罵って、腐った心に刃を立ててほしい。精市にすがって、あたしの口から出るのは謝罪だけ。嗚呼なんて浅ましい女なんだろう。精市の手が肩に触れてぢくぢくと痛みだす
「銀河 愛してるって言って」
「精 市…」
「そうすれば 俺は お前の犯した罪を許そう」
「…せ いち」
精市を愛してる。嘘じゃない。だけどあたしは彼に愛してると伝える権利は無い。自分だけきれいなものになって、罪を許されて、精市の事を忘れてよしまうなんて弱いあたしには耐えられない。精市を忘れるくらいならあたしは一生この罪を背負って生きていく。涙で霞んだ視界ではもう精市の姿を上手く捉えられない。精市との思い出、あたしの罪。忘れたくない忘れたくない、忘れない。自分の胸に刃を立てた