「ねー赤也。見てこれ」
「お前 それ…」
銀河が嬉しそうに広げたのは仁王先輩の写真。んなもんどこで手に入れたんだよ。またかと呆れながら聞けばニンマリ笑って、企業秘密、とだけ答える。俺の彼女は極度の面食いだ
「やーん 仁王先輩かっこいい」
「気持ち悪い声だすなよ」
「だって仁王先輩かっこいいもん。いいなぁ赤也は同じ部活だから」
「嬉しくも何ともねぇけどな」
「うわ 贅沢だ!」
銀河は俺が仁王先輩と(そこそこ)仲がいいのがうらやましいらしい。仁王先輩としゃべってる俺を見れば恨めしそうにしてる。でも絶対にその会話には入ってこないし、仁王先輩と話したりもしない。だから俺は何も言わない
「はぁ かっこいい…」
「だからキモいって」
「冷たい。あたし彼女なのに」
「彼女なら彼氏の前で他の男をかっこいい何て言わないっつうの」
「えーしょうがないじゃん。だって赤也かっこいよくないんだもん」
さすがにこれはムカつく。だいたい今までのやつだっていい気分はしてなかった。だったら仁王先輩のとこに行けよ。ほんとに行ったらどうしようもないから言わなかったけど、やっぱ心の中ではそう思う。つまり惚れた弱みってやつだ。目に血が溜まる感じかする。そんな俺を見て銀河が笑う
「あたし すっごい面食いで仁王先輩の顔めっちゃタイプだけどさ」
身をのりだして近づいてきた銀河の手が、俺の目を覆った。冷たくて小さい手
「でも 仁王先輩じゃ嫌なの。あたしの彼氏は かっこよくない赤也じゃなきゃダメなの」
手が離れて、目を開けたら銀河が真っ赤になってた。うわどうしようまじやばい。かわいい。いや、俺まで赤くなってどうすんだよ。先に微妙な無言に耐えれなくなったのは銀河で、何か叫びながら抱きついてきた。俺も変な声が出て、二人で床に転がった。首にしがみついた銀河の髪が鼻をくすぐったとき、目の熱は消えていた