これほどに人の揚げ足を取るのが上手い人間がいるだろうか


「跡部 監督がレギュラー集めろって言ってた気がする」

「気がするってなんだよ。ちゃんと話聞いとけ マネージャー」

「いちいちマネージャーって言わないで。何回マネージャーと呼ばれても あたしは自分をマネージャーだとは思わないから」

「ああ はいはい。銀河 部員集めとけ」

「ちょっとあたしの話聞いてた?」

「頼んだぞ マネージャー」


マネージャーって呼ばないで


「マネージャーになりたいなんて一言も言ってない女の子が どうやったら自動的にマネージャーになれるわけ?ほんと不可解」

「銀河先輩 跡部さんが部員を集めるように言ってました」

「わかってるっつうの。おまえらー あちゅまれー」

「…………」

「………………」

「…………………」

「…………なによ鳳 なんか言いたいことあるなら言いなさいよ」

「先輩今 あちゅまれ って言いましたよね?絶対 あちゅまれ って言いましたよね?」

「言ってない」

「いや言いました 向日先輩なんて地面叩いて爆笑してますよ」

「あいつぶっ殺す」

「先輩が噛んだから」

「噛んだから?噛んでないってんでしょ 何回も言わせないで」

「や でも明らかに」

「噛んでない。あたしのことを一番わかってるあたしが噛んでない って言うんだから噛んでないんだよ」

「おい 銀河があちゅまれだってよー ぷぷぷッ!」

「ゴルァ向日 お前調子こいてんじゃねぇぞボケ」

「全員あちゅまりましたぁ」

「……………帰る」


やってられっかこんな部活。あばよお前ら 金輪際あたしがこのテニスコートに現れることはない


「あ おい。どこいくんだよー」

「帰る さよなら」

「あ?部活まだ終わってねぇだろ」

「関係ない もうやだ」

「え お前まじで怒ってんの?まじで帰んの?まじ?」

「しつこい 絡んでくんなばか向日」

「う… おい長太郎。何とかしろ」

「え ええ 無理ですよ。てゆうか向日さんが悪いと思います」

「あばよ」

「ちょ こら銀河!帰んな!俺が跡部に怒られるだろ!」

「しったこっちゃない。焼くなり煮るなり好きにされてしまえ ばか者」

「まじ帰んなって!悪かった 俺が!だから帰んなって!」

「あたしが居ようが居まいが なにも支障はないでしょ。あたし 大して仕事しないし。なんだかんだて自分達でなんとか成り立ってんじゃん」

「それは今さらだけど まじ謝る。お前帰ったらモチベーション下がるやつ結構居るんだって」

「知るか」

「先輩そんなこと言わないでください。ほんとやる気1割減なんですよ。あ こんど昼飯奢りますから」

「昼飯?今の言葉 死んでも忘れないから。つかやる気1割減って少なくね?減少幅少なくね?」

「安い女」

「は?帰るぞ」

「うそごめん。デザートつける」

「ふん しょうがないなぁ」


大勢の部員が集まる真ん中であたしたちが繰り広げた交渉劇は昼飯(デザートつき)によって示談が成立した。まわりのギャラリー達からはパラパラと拍手が起こった。なにその微妙な拍手は。てゆうか安い方よ こんな名誉毀損で昼飯(デザートつき)なんて。あたしの懐の広さといったらもはや宇宙だ ビッグバンだ


「あたしは一体誰のモチベーションを左右してるんだろう ちなみにあたしのモチベーションは常にロウ」

「なんだすげぇな 全員集合してんじゃねえか。銀河なかなかやるな」

「はぁ?偉そうにすんな跡部。こいつらが勝手に集まってきただけだし」


あたしの疑問はKYに現れた跡部が掻き消した。結果 誰もその問いに誰も答えることはなかった。とにかく今日もあたしは奴等の部活姿を見届けることになりそうだ


(だって君は僕らのマネージャー)


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