serial | ナノ 夢を見ているのかもしれない。体の先端まで温もりに包まれている感覚。あまりに心地好くて、ずっとこのままでいたいと思ってしまう。
重たいまぶたを少しだけ開くと、目の前に影のような何かがあった。何となく人の形に似ていて、悪いものではないことはわかっていた。ゆっくりとその影は変形を繰り返し、いつしかそれは私のよく知る人物へと遂げた。やはり、夢に間違いなかった。
私の、愛しい人。

「バージル……」

囁くと、彼は微笑む。同じように微笑みを返す。
バージルを見つめている内に、気がつくと私の頬に涙が伝っていた。無意識に涙が流れていたのだ。
悪魔に一人で立ち向かった時の映像が脳内に流れ込んできた。自分は弱いと思い知らされたあの戦い。

「バージル、聞いてほしいの」

彼は小さく頭を縦に降った。

「私ね、一人でも大丈夫なように強くなりたくて、頑張って戦ったよ。足手まといはバージルの邪魔にしかならないし、……結局ぼろ負けしちゃったけど」

言葉を口にすればするほど、溢れかえる涙。ここで全部流れきってしまえばいい。現実に戻ったら、泣かないで済めたらいい。

「ホントは私、死ぬかと思ったよ。ダンテが……助けにきてくれなかったら。弱いから、私っ…………私、弱い」

だんだんと言葉を口にするのが辛くなってきた。
合間に嗚咽が混じる。

「どっかで、期待してたのかもしれない。バージルが、助けに来てくれるんじゃないか、って。私が弱いこと知ってるバージルなら。……ダンテじゃ、なくて、バージルが来てくれる、って……!」

壊れてしまいそうなほど胸の鼓動が訴えてくる。
ここでなら、許してくれるよね。気持ちを伝えても。
子どもが泣きじゃくるみたいに声を上げて泣き始めた。締め付ける喉から無理やり声を出して。
心の中で淀んでいた想いを、閉ざされた蓋を開けて、今すべて、ここで。

「バージル、ずっとずっと、大好きだった……っ! 好き、……胸が痛いくらい、好き。バージルの心には別の人がいるのは知ってる、よ。だけど、っ」

愛してる。心の底から、バージルを愛してます。
この気持ちが現実に届かなくてもいい。でも、いつか叫ぶように言いたかったこと。
夢の中でなら、許してください。
耐えられなくなって、両手で顔を覆い隠して声を殺しながら泣く。感情を抑えきれなくなってしまった。心の中にしまっていたものがすべて涙となって溢れ出てくる。
ややあって、ふわりと、何かが体を覆った気がした
顔を上げると、私はバージルの胸に抱かれていた。

「バ、……ジル」

彼は何も口にすることはなかった。
泣きじゃくる子どもを慰めるかのように、抱きしめてくれていた。
それだけでも幸せだった。
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