serial | ナノ Devil May Cry
扉の上を飾るネオンの文字が光る。
扉を開けて中に入ったダンテは、視界に入った光景に思わず口元を歪めた。

「よお〜バージル。どっかにお出かけか?」

肩をすくめて皮肉めいた口調で言った。
青い外套を羽織り刀を携えたバージルは、ダンテの言った通り出かけようとしていた最中であった。しかし、その様子にためらいが混じっていることなどダンテの目には明らかだ。
バージルの青い双眼が見据える。なにかを求めるように。

「……へっ」

そんな瞳を見て、ダンテはひとつ鼻を鳴らした。
奥にあるソファーに足を運ぶ。ソファーの上にごろんと横になり、テーブルに置かれた籠に手を伸ばす。何種類もあった果物の中から、リンゴを取ってかじりついた。

「やっぱあいつ、一人で依頼受けてたみたいだぜ」
「やはり、そうか」

バージルの眉がかすかに震えた。

「んな顔すんなよ。無事だぜ、一応な」
「一応?」
「ああ。ボロボロだったけどな」

生身の人間であるにも関わらずひとりで悪魔関係の依頼に手を出すことは死にに行くようなものだ。まして、あのなまえが一人で依頼をこなすことなどできるはずはなかった。できるなんて思っていない。

「間一髪。俺がもうちょっと遅かったら、死んでたかもな」

ダンテの軽い口ぶりに、立ち尽くす瞳が睨みつける。バージルにとって、それは皮肉に聞こえたのだろう。

「なんだよその目は。死なずに済んだんだぜ? 俺の助けでな」
「……なまえは今、どうしてる」
「気ィ失ってる。……ま、なにはさておき無事だったぜ」

なまえの命に別状はない。
求めていた答えが聞けてバージルは少し安堵したのか、静かに目を伏せた。だが、その表情は複雑だ。
リンゴをひとつキレイに完食したダンテは、もうひとつ籠からリンゴを取って、手の中で遊ばせる。ソファーから飛び立ち、玄関の前で一度立ち止まった。
バージルを振り返った瞳は、どこか物悲しい。

「なまえを襲った悪魔、アレだった。数年ぶりにやっと出てきやがった」
「なん、だと!?」

勢いよく頭を振り上げたバージルの表情は驚愕に染まり、珍しく唇を震わせた。それは無理もない反応だ。なまえを襲った悪魔とバージルは、かつて思い出があるのだ。それも、最低最悪なもの。
ダンテは舌打ちした。横目に青を見遣る。

「バージル、刀置け。お前は来なくていい。そこでいつまでも立ち止まってろよ。……お前がそこまで馬鹿じゃなきゃ、なまえがあんな目に遭わなくて済んだんじゃねえの?」
「……っ」

なにかを言おうとして開いた口だが、バージルは奥歯を噛み締めて押し黙った。
ダンテはリンゴをポケットに詰めて、なにも言わずに事務所を出た。

バージル――いや、獣の瞳は大きく揺れていた。
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