serial | ナノ 今朝のバーナビーとスカイハイのいらぬ告白をそばで聞いていたカリーナがその後、二人を説教したなんて言うまでもない。
そして現在、なまえは昼食中である。
我ながら美味い。男女どちらのときも料理の腕が変わらないというのはうれしいことだ。

「おうなまえ〜。今日の夜、空いてっか?」

トレーニングを終えた虎徹が額の汗を拭いながら隣に腰かけた。
なまえは卵焼きを口に放り込む。卵焼きは甘いのが好き。

「ん、空いてるー」
「おし、じゃあ飲み行こうゼ」
「おう、行こう行こう」

ニ、と笑った虎徹に、ニ、と笑顔を返した。
このように自然に振る舞える虎徹を見習ってほしいものだ、あの二人には。

「僕も行きます」
「私も共に行く!」

……噂をすれば影。
どこからか現れた二人はなぜかなまえの足元に膝を着いて、かすかに笑っていた。そのかすかな笑みがまた、はなはだしい。一体なにを考えてるのやら……。そして座り方が主従関係みたいだった。

「ら、らしいけど虎徹さん」
「あ? いいんでね?」

お気楽に鼻をほじっていた虎徹はてきとうに返事をくれた。
すると、そこにネイサンも混じる。

「あらあら、なまえちゃ〜ん。あたしのことは誘ってくれないのぉ?」

横を見ると、背もたれに寄り掛かったネイサンの顔が思ったよりも近くにあって少し驚いた。

「んふふ、その膨らんだほっぺには一体なにが入ってるのかしら? あんらぁ、柔らかい」

つんつんと卵焼きの詰まったほっぺを指で突かれた。

「あ、ちょ、ネイサン、やめ、やめろ食事中なんだから」
「うふ、ごめんなさぁい。かわいくてつい」

なんとなく昼間のほうがネイサンのスキンシップとボディタッチが執拗な気がする。
遠くのほうから「昼間から男ばっかでベタベタしないでよムサ苦しいわね!」というカリーナの怒鳴り声が聞こえた。
ごもっともです。



もうすぐ日が暮れそうだ。
帰宅の準備をしていると、後ろで小さな悲鳴がした。
振り返るとそこにバーナビーがいた。物悲しそうな顔で立ち尽くしている。

「どうしたのバニー? 変な声上げて」
「なまえさん……いつ女性に戻ったんです?」
「ちょうど今さっきだけど」
「そ、そんな、今日こそ女性になる瞬間をこの目に収めようと思っていたのに! 悔しいです……」
「ああ、そう……、残念だったね」

まるでゾンビのようによろよろと近づいてきた彼の瞳には、わずかに涙が。どんだけ悔しいのだ。
正直、異性に変わる瞬間は誰にも見られたくない。軽い発作的なものが起こるのだが、それが、なんというか、他人に見せるには恥ずかしいものがあって。
バーナビーは黙ってなまえを見下ろしている。そんな彼を見上げて、なまえは笑った。

「あはは、バニー大きくなったね」
「えっ……なまえさんが縮んだんでしょ! どうしてあなたはいつもそうやって可愛らしいことを言うですか? 僕を試してるんですか?」
「い、いや、ごめん」

軽い冗談のつもりだったのだけど。
全力でツッコまれてなまえは少し引いた。
と、そこへ。

「なまえ、帰るのかい? よかったら一緒に帰ろう!」
「あ、スカイハイ。うん、帰ろ」
「名前で呼んでくれるとうれしいのだが」
「そう? じゃあ、キース」

呼ぶと、心なしかキースの頬が赤らんだ気がした。

「それじゃ、バニーはまた後でね」
「はい、後で」

手を振って、キースと部屋を出た。



バーナビーはなまえが部屋を出てもなお手を振り続けている。

「いつまで手ぇ振ってんのよ。あんたって、ほんとになまえのことが好きね」

とカリーナは呆れの含んだため息をついた。

「そう言うブルーローズは男のなまえさんが好きなんでしょう?」
「え? べ、別にそんなんじゃないわよ! どっちのなまえも友達、っていうか……」
「僕は好きです」

バーナビーのまっすぐな瞳を見て、カリーナは気恥ずかしさを覚えた。

「よ、よくそういうこと平気で口にできるわね」

彼に話かけたことを少し後悔したカリーナだった。
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