serial | ナノ
突き刺すような日光が容赦なく降り注ぐ。
今は夏休みだ。海に訪れる人々は多くいる。そこに私たちも立っていた。

「海ー! 海だ海だ〜!」
「ああ、海だ!」
「だまれ……だまれだまれ……そして死ね、忌ま忌ましい太陽と共に消えされ……」

広大な海を前にはしゃぐ私と、海パンの家康。そして、麦わら帽子とTシャツ姿でブツブツなにかを唱えている三成。すでにミイラ化している彼は今にも倒れ伏してしまいそうだった。

「三成先輩、大丈夫ですか?」
「そ、そこに秀吉様がいらっしゃる……」
「いや、こんなとこに校長いないから!(豊臣秀吉は学園の校長である。ちなみに副校長は竹中半兵衛である)」
「まったく、だらしが無いぞ、三成!」

直射日光を浴びて機嫌が良い様子の家康は三成の背中をバン! と叩いた。

「ウグッ……き、きさまぁぁぁぁっ」

血走った目が家康を睨み上げた。あんな目で見られたら呪い殺されそうだ。
すると。

「やれ、待たせたな」

旧友とやらを連れてくる、と言って一人どこかに消えていった大谷が戻ってきた。
その横には、二人の男性が。一瞥した限りチンピラ風な方が一人、こちらに近づいてくる。

「よおお家康、石田! 久しぶりじゃねえか!」

その口調と雰囲気で気さくさを思わせた。左目を眼帯で覆った銀髪の男は三成と家康の肩にがしりと腕を回した。

「はっ、はな、はなせ長曽我部っ……」

三成の顔色が徐々に青ざめ始めている気がする。逃れようとあがくが青白く華奢な三成の腕は筋肉の引きしまったたくましいそれに敵うはずもなかった。
対して家康は爽やかな笑顔で長曽我部の肩を抱き返す。

「久しいな、元親! お前も相変わらずじゃないか。元気だったか? まぁ聞くまでもないか、はっはっは!」
「おうよ、この通りピンピンしてるぜ! ……おう? こっちのおチビちゃんは誰だ?」

元親と呼ばれた彼は私の目の前に腰を落として頭に大きな手を置く。彼とはまるで大人と子どものような身長差だ。

「ああ、紹介するよ。後輩のなまえだ。可愛いだろ」

私は太陽にも負けぬ勢いでボッと顔面を熱くさせた。

「かっかわいい、なんて滅相もありません! こんなときだけ止めてくださいよ家康先輩ってば」
「なんだ、照れてんのかおチビ〜」

わわしゃ、と頭を撫でられた。
なんだか頼れる兄貴って感じだ。……ん? よく見るとこの人の周りだけ爽やかな風が吹いてる気がする。

「あ、ぁ……秀吉、様……」

どこからか亡者のような声がしたと思いきや、

「あっ、三成先輩!」

バタリ、と彼は仰向けに倒れてしまった。
私は急いで身をかがめて三成の顔を覗きこむ。生きてはいる。しかし灼熱の太陽にやられ完全に目が回っているようだった。

「まったく相変わらず貧弱なヤツだぜぇ」

ため息まじりに長曽我部が言うと、ひょいと軽いしぐさで三成を持ち上げて肩にぶらさげ踵を返して歩き始めた。
大谷もそのあとに続く。

「別荘がある。ゆくぞ」

私と家康もそれに続き、

「別荘? 誰のですか?」
「奴のだ」

大谷はアゴで長曽我部をさす。

「えっ、あの人の? お金持ちなんですか?」
「さぁな」

さぁな、って。

その別荘とやらで私は三成を介抱することになる。
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