serial | ナノ 五年生の先生が出張で不在のため、代わりに私が五年生の授業を受け持つことになった。

「と、いうわけで皆、いい子にしてるように」
「けっ。わざわざなまえがやる必要ねーだろ」
「五年生がうらやましいぞ!」
「なまえのいない時間、退屈だなぁ」

留三郎はそう吐き捨て、小平太は笑い、伊作はため息をつき、不服を述べた。

「仕方ないでしょ頼まれたんだから。断る理由もないもの」
「……し、し、仕方ないとはいえお前6Pはさすがにキツいだろ! っくそお、俺たちでもまだだってのにィ……!」

やけに努のきいた表情を浮かべた文次郎が頭をがしがしとかいて悔しそうに叫んだ。

「うむ、ギ、ギチギチだ」

いかもにも想像してます、というような言いようで仙蔵は天井を仰ぐ。

「あ、そっか。病み上がりなんだから無理しないほうがいいよ、なまえ」

伊作はなぜか誇らしげだった。

「お前たち、今の会話はよく聞こえなかったことにしといてやる。いいな」

そうしてバカタレな会話が続いて授業に遅刻しそうになりながらなまえは五年生の教室に向かったのであった。





「諸君、今日一日よろしく頼む。わからないことがあったらどんどん質問していいですよ」
「せんせー」
「なんだ、竹谷」
「何歳なんですかー?」
「十七歳だ」
「うおっ、まじか」
「若いな……なんかムンムンしてきた」
「ひゅ〜」
「っ、はぁ、はァ……」

というような声が混じって教室内がざわついた。

「せんせー、生娘ですか?」
「それは……ってどさくさに紛れてそういうことを聞くな!」
「えへ、すんませーん」

竹谷の顔は少し赤かった。彼は生物委員で、生き物が大好きだと聞いたことがある。
すると、不破雷蔵と同じ顔が上から目線で、

「噂には聞いてるよ。その年でプロ忍者なんだってね、ふ〜ん、な、なかなかやるんじゃない?」
「さ、三郎、その言い方失礼だよぉ。まだ先生がツンデレ好きかなんてわからないんだよ?」
「……そこ言うなよ、雷蔵」

なかなか個性派な五年生たち。
思わずなまえが口元を緩ませてしまったのは、まるで彼らを六年生を見ているみたいだったから。

「先生ー」
「なんだ、尾浜」
「久々知くんが豆腐でお下劣なことしてまーす」
「と、豆腐?」
「ハッ、はぁ、……お、おい勘右衛門、なんで言うんだよ酷いぞ……ッ」

見ると、久々知兵助は机の下でごそごそとしている。そして顔は全体的に熱を持っているようだった。

「ちょ、久々知お前息が荒いぞ? 大丈夫か?」

なまえは久々知の前に膝を着いて彼の額に手を置いた。すると表情は苦痛のものに変わり、うるうると目に涙を溜め始めた。その上、体は小刻みに震えている。

「ん、熱はないみたいだ。大丈夫か、久々知?」
「先生、それ逆効果だよ」

とどこか冷めた声で隣の尾浜。

「せん、せッ……」
「な、なんだ?」

久々知は体を強張らせなまえを見上げると、あえいだ。

「お、俺……もう、っ……ぅぐっ……ァ――!」

最中。

後片付けを済ませ、やっと教室内が落ち着きを取り戻した。そう、なまえ以外は。
五年生は馬鹿と馬鹿と阿呆くらいしかいないのだろうか……! 授業中にあんな行為をする奴がどこにいるしかも豆腐で。いやここにいた。年頃だから仕方ない、で済ませていいのかな……!

「先生ー」
「な、なんだ尾浜」
「顔が赤いです」
「当たり前だろうがぁ!」
「許してやってよ先生。こいつ、まじで豆腐が好きなんすよ。あとなまえ先生のことも大好きみたいで」

久々知の肩に腕を回して尾浜は呆れながらも弁解をした。当の本人は照れ臭そうに笑みを浮かべて頭をかいている。

「いやぁ、すみませんなまえ先生。いざ先生を目の前にするってこと考えたら俺の息子がいてもたってもいられなくなってしまったみたいで。授業前から豆腐で、その、はい、えへへ……」
「おまっ、授業前からやってたの!? 皆なんで止めなかった!」
「えー、だって面白そうだったし」と三郎の後に「うんうん」と雷蔵。
「俺気づきませんでした」言いながら竹谷はなぜか箸を持っていた。

なまえは呆れて顔を押さえた。
……いいのかな、レベルが六年共と同じで。

「なまえ先生……!」
「なに!」

久々知はなにか意を決したように顔を振り上げた。

「俺の豆腐になってください!」
「もういいから黙れ!」

間髪いれずに断ると、久々知は涙目になって尾浜に泣きついた。

「先生、もう授業始めようよー」
「わ、わかってる。それでは、やっと授業を始めます」

刹那。
カ〜ン!
ヘムヘムの鳴らす授業終了の鐘が、轟いた。
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