serial | ナノ
もうすぐ夏休みがやってくる。やっほい! ……な偉大なる行事の前に。明日、なまえの学年は遠足へと旅立つ。
某ピクニックランドへ行く。新しいクラスとの交流と親しみを深め、他人と協力することを学び、カレーを作り、カレーを食べ、カレーを食べ、カレーを食べる。それが目的らしい。

「私も行く」
「え……?」
「その遠足とやらに私も行く」

帰路を進んでいると、横を歩いている三成は断言した。

「そ、そんなの無理に決まってるじゃないですか!」
「奇遇だな、三成。わしも行こうと思ってたよ」
「えぇぇ! い、家康先輩まで……!?」

右隣を歩く家康も、腕のストレッチをしながらどこかはりきった様子だった。

「ん? いやか?」
「そんなわけないです! じゃ、じゃなくて……」

そもそも学年が違う。行く行かないの問題ではなく、“行けない”。

「ふざけるな、家康。そしてなまえの横を歩くな。私の横を並ぶな」

左上の三成は、右上の家康をとても冷たい瞳で睨みつけた。家康はそれを軽くあしらっている。真ん中を歩くなまえは凸と凸に挟まれた凹の立場だった。左右を交互に見上げる始末だ。

「と、とにかく絶対無理ですよ。先生たちが怒りますよ」
「勘違いするな、なまえ。私は貴様と尼子を二人きりにさせられんと言っているのだ」
「え、あ……いや、平気ですって。他の生徒もたくさんいるし……」

この間、尼子は謹慎から復活した。宇都宮も退院した。ふたりとも元気に過ごしているが、尼子からは謹慎以前と変わらぬスキンシップをくれていた。むしろひどくなっているかもしれない。それ相応に三成のガードも固くなっていた。

「尼子という男については三成から聞いた。わしもなまえを放っておけなくてな」

家康が柔らかな笑みでなまえを見下ろした。ああ、なんて優しい笑顔――。

「で、でも、私がどうこう言える立場じゃないですし……」

しゅん、と間で小さくなった。二人はなにを言っても行く気は薄れないようだ。……うん、いいんじゃないかな、もう。一緒にカレー食べよう。
なんて空を仰いでいると。

「ひっひ」

振り向かなくてもわかる。この笑い声の持ち主は一人しかいない。

「刑部。いたのか」

いち早く背後を見た三成。
刑部――大谷(保健室の魔法使い)と三成は親しい仲にあった。

「やれおぬしら。今の話、聞こえていたぞ」

ふよふよと浮いている大谷は中身の詰まった唐草模様の風呂敷(通勤袋らしい)を両手に抱えていた。大谷も帰り道のようだ。って唐草模様かよ。

「そこの二人は明日の遠足に行きたい、とな」
「行きたいのではなく、行くのだ」断言三成。
「ひっひ。……そこまで言うならば、我に任せてみよ」
「なに?」

三成はまゆをひそめた。

「ちょ、大谷先生、なにかいけないこと考えてませんよね……?」

大谷先生の顔は企みの形相だった。

「ひっひ。明日になればわかることよ」
「な、なにする気ですか……?」

恐る恐る聞いてみた。

「暗示、暗示よ」

大谷は肩を揺らして笑った。

『暗示?』

三人は首を傾げて、はもった。
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