久しぶりにあたしは、貴方の姿をみた。
ちっとも変わることのない強き魂と鋭い目つき。見間違えるはずなんて、なかった。

忘れずはずも、なかった。





「晋助、あたしもこの世界が憎いわ」




憎いのよ、

大切なすべてを

家族を、松陽先生を奪った

この世界が憎いのよ。






「‥‥すべて、壊す」


できることならば
戻りたいよ、
護りたいのよ、


でももう遅い。






「‥‥真央!なん‥で、オマエ‥‥‥」

「銀時‥」

「アレですかードッキリですかコノヤロー。冗談じゃねェ、頭までいかれちまったのか!」





だって、どうしようもできなかったんだもの。大切なものを奪った幕府を、世界を憎むしかできなかったんだもの。

弱虫なあたしには、あんたたちみたいに「護る」ということができなかったのよ。




「高杉ィイイイ!!」



あたしと高杉に向かって叫ぶ小太郎も銀時もかつては盟友だった、でも、今はもうただの"敵"でしかない。




「ククッ‥」

「‥あたしは、この世界も何もかもが憎いわ」


獣のような目で怪しく笑う高杉にたいして、あたしは低く落ち着いた声で言う。




「オメェ、まさか、あいつらと同じ考えをもっているんじゃあるめぇな‥」


真央は、きょとんとした顔をするもすぐに小さく笑ってみせた。



「バカね。あたしは、この世界を壊すまでよ。」






「銀時、あたし強くなるために江戸をでるよ」

「‥ッ、」






「このまま聞いて、

絶対振り向かないで。

絶対手を引いたりしないで。

‥何も、言わないで。」








かつての恋人も盟友もすべて、捨て去った。結局あたしは、大切な人を「護る」じゃなく「手放した」のだ。

あれほど大切に思っていた人たちも全部捨てて、あたしは世界だけを憎んだ。


でも、知っているの。
こんなことをすることに、何の意味もないこと。小太郎が言うように他に何か方法があるはずだということ。






「ぎ、‥‥と、きッ」


真央は一気に力を失い、身体から崩れ落ちた。

もう、ダメなんだと。
あたしは、もうあの頃のあたしじゃないんだと。


真央は、そう思いながら床にポタリと落ちる水滴をずっと眺めていた。



「‥‥‥す、き‥‥ッ」



一粒、

二粒、

落ちる水滴を

ずっと、

ずっと、

眺めていた。



「‥‥‥‥‥ごめ‥ッ!」




あたしは、この世界が憎いの。

あなたを愛してしまったあたし自身も‥‥憎いのよ。





「銀時への想いだけは、
変わらないから‥」



それでも、あなたを


愛する事は許されますか?


(一分、一秒でも)
(あなたを想っていてもいいですか)











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