斬って

斬って

斬って

我に返ったとき、あたしの目に映し出されたのはたくさんの仲間の屍、

そして

血、血、血、

それだけだった。






「おや、真央じゃないか。どっかお出かけかい?」

「あ、お登勢さん、コンニチハ!ちょっとお散歩に」


万事屋を出て階段を降りたところで、スナックお登勢の前にタバコをふかせて立っていた女の人と目があった。

その人は、いつもどおりといった感じで話しかけてきたのだ。



「おや、そーかい。気ぃつけてな。なんせ今日は、お昼過ぎから大雨だなんて予報されてたからねぇ」

「お登勢さん、ありがとう。」

「それより、アンタんとこの野郎に今月分の家賃を払うように言っといてくれよ」


バツの悪そうな顔をして、お登勢はタバコの煙を静かに吐いた。

あたしは、それに苦笑するしかできなかった。



「‥あ、ハハハハ‥‥‥わかりました、あのテンパ野郎にこれでもかってくらいに言っといてやりますよ」

「ふ、助かるよ。ほんと、アンタはいい子だよ」

「お登勢さん、お褒めの言葉ありがとうございます。でも、何も出てきませんからね?アハハ」


真央がくすり笑うと、お登勢もまた柔らかく笑ったのだ。


「何もあたしゃ期待してないよ、まったくおかしな子だねぇ‥ふふっ」


真央もまた同じように柔らかな笑みを浮かべてから、また歩き出した。


「いってきます、」














あの日からちょうど3年目。


あたしは、ちゃんと笑えているのだろうか。

あたしは、ちゃんとまっすぐに立つことができているのだろうか。





「あ、傘、忘れた」






斬っても、斬っても、
失うばかりで何ひとつ得られなかった。


天人、襲来。
あの日、すべてを奪われた。
大切な仲間も、両親さえも。



それでも護ろうと、刀を振るい最後まで闘い続けたあたしたちは間違っていたのだろうか。

3年経つ今も、あの日の光景が鮮明かつ昨日のことのようによみえがってくる。




「‥――父上、母上、あたしは間違っていたのでしょうか」





ポツリ ポツリ
雨の雫が、落ちる

頬にあたると、雫の冷たさがよくわかる。
ああ、あたしは生きているんだと実感できる。









「間違ってなんざいねェよ」




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