神楽の雨の日と傘のお話。ネタバレにつき閲覧注意!











「うわー、最近雨ばっかりだよね。やだなぁ‥もう」

カラカラと玄関の戸を開けて、傘を取り出してため息をつく。

「まぁ、梅雨ですからね。にしても、このジメジメほんとどうにかならないんですかね」

「ねー。ジメジメして嫌になるよね、洗濯物も乾きにくいし」

奥の部屋からソファーでくつろぐ新八くんが顔をだして言う。

そう、今は6月。つまり梅雨の時期なのだ。おかげでジメジメした湿気で、洗濯物の乾きも悪くて部屋中に干される形となっている。


「新八くんも行くー?」

「すいません、僕ちょっと掃除が残ってるんで」

「そっかあ、じゃあ神楽ちゃんはー?」

さらに部屋の奥でぐったりうなだれている彼女に声をかけたが、返ってきたのはだるそうな声だけだった。

「行かないアル。雨は嫌いネ」

「えー一人じゃあ寂しいしなあ‥」

「じゃあ、みんなで行きませんか!掃除は後にして!ね、銀さんも!」

「あァ?‥めんどくせェな」


この家の主である彼は、面倒くさそうに頭を掻きながらも重たい腰をあげたのだった。












「結構すごい人だねー」

「そうですね」

「傘ばっかで歩きにくいな、ったくー」


すれ違う傘と傘。
色とりどりの傘は、曇っている空も冷たい雨も吹き飛ばすかのようにその色たちを際だたせていた。


「神楽ちゃん?」


様子がおかしいと思い声をかけるが返答がない。
‥‥なんか、元気ない?


しばらく神楽ちゃんの様子をみていると、すれ違う傘たちの行方を目で追っていることがわかる。時折、自分の傘を眺めては表情を曇らせていた。


「じゃ、ちょっと、お買い物してくるからね」

「あ、真央、俺のジャンプもよろしく」

「‥‥まったく!わかったよ」


仕方ないなぁ、そう言ってあたしは大江戸ストアに足を運んだ。簡単にお買い物を済ませるだけのため、3人は外で待っていてくれてるのだ。


「えーっと‥」

これがいいかなぁ、なんて迷った挙げ句、結局最初に目をつけたやつに手を伸ばし、会計へと進んだ。








「神楽ちゃん、プレゼント」

さきほど会計をすませた物を神楽ちゃんに差し出すと、ビックリしたのかとキョトンとした顔をしている。

「これ‥‥?」

「さっき神楽ちゃん、ほしがってたじゃない」

「もらっときゃーいいだろ」

「そうだよ、神楽ちゃん」


新八くんも銀さんも、中々手をとらない神楽ちゃんに貰うように促すが、意外にもそれは逆効果だったようだ。


「こんなんいらないアル。私はこの傘があるネ‥!」

傘をあたしの方へと跳ね返す神楽ちゃん。
素直じゃないなあ、そう思ってあたしはクスッと笑った。


「あたしからのプレゼントなのに‥なぁ。じゃああたし今日から、この傘使うしかないなあ」

「‥‥!仕方ないから、もらってやるアル!」

「これ、神楽ちゃんに似合うなぁと思って選んだのよ」

「‥‥‥ありがと」


小さくポツリ呟くように言った彼女は、手に持つ傘をぎゅっと握りしめた。
それをみたあたしと銀さんと新八くんはクスリと笑って笑みを浮かべていた。












――それから、毎日のように相変わらず雨は降り続いていた。

雨が嫌いだと言っていた彼女は、毎日のように外に出掛けていた。風が強く吹いても、大粒の雨が降ったって気にせずに彼女は出掛け続けた。


「ふっ、嬉しそう」


玄関の戸を開けると、階段を勢いよく駆け降りてはしゃぐ神楽ちゃんの姿があった。

新しい傘が手元にあるのが、相当嬉しかったのだろう。キャンディの柄をした傘はくるくると回り雨の雫がキラキラしてみえた。








「おかえりー神楽ちゃん」

「‥‥‥ただいま」

「神楽ちゃん?」


どうやら元気もなくて、背中には何かを隠しているようだった。

「びしょ濡れじゃない!早くお風呂に」

「うるさいアル‥!」


ドタドタと廊下を駆け抜けると扉を強く閉めて神楽ちゃんは、部屋へと籠もってしまった。


それから彼女は、2日ほど家に籠もりきりだったが、数日たった頃からまた外へと駆け出したのだった。

そんな日だからこそか、今まで以上にない強い雨が降り、神楽ちゃんの帰りもいつになく遅い。


「遅いなぁ‥」









雨の日は、よく嫌いっていう人がいるけれど。外に出てみたら何か新しい発見があるかもしれない。
そしたらちょっとは、好きになれるかもしれない。人っていうのは、そんな風に単純にできてたりする。




「お嬢さん。ここにあなたの傘があるみたいなんだけど、一緒にいれてくれないかなぁ?」

あたしは手に持っている、神楽ちゃんのいつもの傘を差し出す。
雨に濡れた神楽ちゃんは、今にも泣き出しそうな顔をしている。


「真央にせっかくもらった傘‥‥‥壊れて、‥‥男の子にあげちゃったアル」

「ふふ、あたしの傘が役に立ったならいいのよ」


じわじわと神楽ちゃんの目には涙が溜まっている。
あたしはその涙を軽く拭った。


「お嬢さーんたちーいい傘もってんねー俺も入れてくれよ」

「ずるいですよー銀さん!僕も入れてくれますか?」


知らぬ間に後ろで微笑む新八くんと銀さんにあたしは、クスリと笑みを漏らした。



「神楽ちゃん」

キョトンとする神楽ちゃんの手をとり、歩き出す。両側には、新八くんと銀さん。


「今度は、お揃いの傘、買おうね!」


みんなの笑顔をみたら、たまには雨の日もいいのかもなぁなんて思ったり。






雨が降ったら

一緒に出掛けようか、

歌でも口ずさみながらさ





▼ネタバレですね、これ。
このお話すごい好きなんで
書いちゃいました!
神楽かわゆいなぁほんと。



20110407


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