いつだったか、あたしが愛していた人が優しい目でこう言っていた気がする。
「出逢えて、よかった」と。
その目はあまりに優しくて、添えられた手はあまりに温かくて愛しくて、涙が溢れそうになった。
「あの、‥‥――あなたは、誰ですか」
真っ白に近い部屋で、あたしの目の前にキレイな銀色の髪をした男の人が血相を変えた顔で立っていた。
「は、はは、‥‥何言っちゃってんの、真央ちゃん。大人をからかうんじゃないぞー」
「‥‥‥」
「イタズラだったら俺ァ許さねーぞコノヤロー」
「あたしの、名前、‥‥真央っていうんですね」
どうしてだろうか、何故この男の人は泣き出しそうなほどに悲しい表情を浮かべているのか。
「あなたの、名前‥‥」
それでも笑顔を向けようとする彼にあたしの胸はひどく痛む。
きょとんとするあたしに気づいたのか、彼は優しい目をしてあたしの手を軽く握りしめた。
「銀時」
「‥銀時、さん‥‥」
「あぁ」
ズキズキと痛む頭部を軽くさすると、包帯がまかれていることに気づいた。
「あた、し‥‥な、んで‥」
真っ暗闇で一人たたずんでいるような気がした。
だって、悲しい、悲しい。
あたしの手に伝わる、彼の震えた手が。
それだけなのに、こわくて、ひどく悲しい気持ちに襲われる。
「真央、‥っ」
ふいに包まれる温度に、またズキリと頭部に嫌な痛みが走る。
「銀時、さん‥?」
全身に伝わる、温度と震え。
彼は泣いているのだろうか、
また悲しい顔を浮かべているのだろうか。
抱きしめられているため、彼の顔を確認することができない。
「泣かない、で‥‥‥銀時さん」
ああ
いつだったかな
顔は思い出せないけれど
あたしの愛していた人は
ひどく苦しそうな顔で言っていた気がする。
「愛してんだ、
‥‥離れていくんじゃねーよ」
と。
ひどく悲しい気持ち、懐かしい温かい体温を感じながら、彼を強く抱きしめあたしは静かに瞳を閉じた。
流れ落ちる涙に気付かぬまま、
Last memory
(いつだって、)
(いつだって、)
(あたしの世界の中心は)
(俺の世界の中心は)
(あなただけ、だった。)
(オマエだけ、だった。)
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