「いい加減、離してくれませんかね?」

真央は、呆れたように言うものの彼はお構いなしに、手を強くひかれたまま街中を歩く。


「逃げるでしょ。」

「うっ‥‥」

「なに、図星なの?」

「逃げるんじゃなくて、離れるだけだもん。」

「君にとっては、逃げるも離れるも同じ意味合いをもってるはずだと思うけどね。」


図星をズタズタと突かれる真央は、次第に苦しくなる。
彼の方はいつもと変わらぬ余裕の笑みを浮かべている。








(なんなんだ、臨也のやつ‥?)

一人ぽつんと取り残されたセルティは、そんな疑問を抱きながらもバイクに跨りまた街中をすごい速さで走り出した。







「だーかーらー!お願いします、臨也さま。ほんと、離してください‥‥コノヤロウ」

「何か言った?」

「いっ、いーえ!!」

臨也のにんまりした笑顔に真央は、慌てて否定の言葉を口にした。



「‥‥臨也」

「何さ、さっきから」

「なんで、あたしの周りには昔から変わった人ばかりが集まるんだろう?」

「真央は、バカだね、そんなの決まってるじゃないか。はら、類は友を呼ぶってヤツだよ。」


得意気な臨也にたいして真央は、疑いの目で軽くじろりと睨みをきかせた。


「おー怖い、怖い。」

「‥‥でもね、みんながいたから寂しくなかったの。」

「‥‥‥‥」

「それだけは、良かったって思えるんだよね。」



うん、ほんとに。
こんなにあたしを振り回す最低で悪趣味な男にだって、隣にいてくれてよかったと思ってる。


「と、いうわけでね、いい加減あたし帰っていいですかね?もう薄暗くなってきたので。」

「君もしつこいね。まぁいいじゃないの、スキンシップってやつさ。」

「スキンシップいらないしっ!」

「またまたー照れないでよ。」


臨也の顔を伺えば、楽しんでいるということが嫌というほど分かった。




「真央、」

めずらしく、真剣な顔をするものだから、あたしはびっくりして立ち止まる。


「臨也‥?」


あたしも負けじと真剣な眼差しで彼を見据えた。




「今日は、鍋にしよう。」



その場の雰囲気には似合わない軽い口調で彼は、いや‥変態情報屋はそう言葉にしたのだ。