「うあー‥ひどい。」


ひどすぎる。
とても、とても。





「オイ、手前。久しぶりに池袋きてそれかよ」

【落ち着け!】


小学校以来の友人である、平和島静雄は、少し苛立ち始めている。

それをなだめるようにして、素早くPDAに文字を打ち込むのは池袋の都市伝説とされているセルティだ。
世間的には首なしライダーと呼ばれている。




「だって、だって!!この顔みてよ!!」

「手前の顔は、飽きるくらいみたぞ」

「なっ‥!あっあああたしの顔って飽きるの!?」

「おい、さっきから発言がネガティブじゃねえか‥?」


静雄は、だいぶ呆れているようだ。それをみたセルティは遠慮がちにPDAをあたしの目の前へとかざした。




【フラれたのか?】






せせせせるてぃさーん!!
そこ、触れちゃダメ。
いたい、いたいよ‥‥







【あ、すまない。そういうつもりじゃなかったんだけど、】


慌てて、申し訳なさそうにPDAをかざすセルティ。







あれも、これも、それも、原因はすべて昨日なわけで。

彼氏にフラれる。
臨也が盗み聞き。
過去を掘り起こされる。




そして、
思い切り泣いた昨日。

今日は面白いくらいに目が腫れている。いや、実際は面白くないのだが。





「ほらよ、元気だせっ」


そういって目の前に現れたのは、プリン。


「わっわわわ!プリンだぁ!」

「余分に買っといたから、やるよ」

「へへ、ありがとう。」




セルティは、プリンが気になったのだろうか、スッとPDAをあたしと静雄の前に突き出した。



【それは、うまいのか?】



だいぶ興味を示したようで、あたしたちからの返事を待ち遠しそうに手をわなわなと震えさせている。




「すっごく、おいしいんだよ。それに静雄は、小学校からずっと好きなんだよね」

「まぁな」

【すごいんだな、プリン】

「そうだよ、静雄をメロメロにさせちゃうんだから!」

「もう、黙ってろ」


あたしの余計であろうひとことに静雄は、バサリと短い言葉を吐き捨てた。